「年収を下げてでも転職していいのか」
物流にいたころ、俺がずっと引っかかっていた問いだ。
先に答えを書く。
俺はあまり勧めない。
自分が下げた側なのに、である。
物流からIT業界に移ったとき、年収は87万下がった。そこから積み上げて、いまは600万円に届いている。
上には上がいる。ただ600万はまあまあいい方なんじゃないかとは思っている。上位20%には入る。
それでも勧めない。キャリアチェンジでも年収を上げる、せめて現状維持でやる。その方が絶対にいい。
この記事では、それでも下げていいと思う条件を2つと、2回目の転職で俺が変えた方法を3つ書く。全部、自分でやったことだけだ。
自己分析のやり方とか、面接で熱意を伝える方法とかは出てこない。俺が書けるのは、実際に手を動かして分かったことだけだ。
前提として、俺の経歴はこうなっている。
- 文系で、地元の物流会社に新卒で入った
- 配車を3年。倉庫作業もドライバーの補助も全部やった
- コードが書けないまま未経験でIT業界へ(1回目・キャリアチェンジ)
- SEとして4年。テストから要件定義、PM補佐まで
- 同じIT業界の中でもう一度転職(2回目・キャリアアップ)
華やかな経歴ではない。プログラミングも結局モノにならなかった。それでも数字は動いた。
まず、7年ぶんの年収を全部出す
こういう話は数字を出さないと意味がないので、先に全部出す。
物流で3年目、400万。ここが出発点だ。
未経験でIT業界に移って313万。いきなり87万下がった。
そこからSEとして4年で350万まで来た。1年あたり10万ちょっとだ。
そして2回目の転職で600万に届いた。
大事なのはグラフの形だ。下がった分を取り返すだけなら、この線は350万で止まっていた。最後の1本が跳ねているのは、2回目の転職があったからだ。
SE時代に年収が伸びなかった理由は客先常駐SEは底辺なのかに書いた。中で交渉しても動く幅が狭かった、という話だ。
それでも下げていいと思う条件は、2つだけ
勧めないと言ったが、例外はある。俺が思うのは2つだけだ。
① 移る先の業界の方が、稼げる見込みがあるとき
生涯収入がどうこうという計算の話じゃない。もっと単純だ。
その業界に入って、今の業界より稼げる見込みがあるか。それだけを見る。
一時的に下がっても稼げると思うなら、キャリアチェンジするべきだ。
俺の場合がそれだった。物流に残っていたら、上司の年収を見る限りこの数字には届かなかったと思う。業界そのものの水準が違った。
逆に、移る先も似たような水準なら、下げてまで動く理由が無い。
ただし、条件を出したなら但し書きも書かないとフェアじゃない。
年収が下がって生活水準を下げるのは、思っている以上にしんどい。
これは本当に気をつけてほしい。数字の上では87万でも、実際に減るのは毎月の手取りだ。
クレジットカードの引き落としが給料を超えた月がある。時間はあるのに金が無い。我慢することが1つずつ増えていく。
② 心がもたないとき
もう1つは単純だ。
心が先に壊れそうなときは、年収を下げてでも逃げた方がいい。
たとえば労働時間が長すぎて毎日しんどいとか、上司からパワハラを受けているとか。そういう場合だ。
俺自身はパワハラを受けた経験はない。ただ、休みの日にも携帯が鳴って、土曜も出社して、というのは経験している。
あれが何年も続くと、判断力から先に落ちていく。年収を計算する余裕すら無くなる。
辞めるか続けるかで迷っている段階なら、判断の材料は物流総合職がきつい4つの理由にまとめてある。
しんどかったのは、4年経っても変わらなかったことだ
もう少し正直に書く。
SEの4年で上がったのは37万だ。50万も上がっていない。
しかもこの4年で物価は上がった。物の価値が上がって、お金の価値が下がったということだ。額面がわずかに増えても、実際に買えるものは増えていない。
東京に出てきてまで、生活するだけでしんどい。
「いつになったら生活は楽になるんだ?」
4年経っても変わらない生活に、すごく不安と嫌気を覚えた。
よく「下がっても後で戻せばいい」と言われる。でも俺が実際に味わったのは待っても変わらなかったという感覚の方だった。動かなければ、たぶんずっとあのままだった。
方法① 年収を妥協しない
ここからが「じゃあどう転職するか」の話だ。
1回目と2回目でいちばん変えたのは、これだった。
年収を妥協しない。
1回目の俺は、提示された金額をそのまま受け入れた。「未経験だし仕方ない」と自分に言い聞かせて。
いま振り返ると、普通に交渉できたと思う。しなかった。
しかも当時は「入ってから頑張って上げてやる」と本気で思っていた。4年で37万しか動かなかった。
入口の金額がどれだけ重いかは「客先常駐はやめとけ」は本当かに書いた。次の転職でも今の給与がベースになるので、安く入ると後々まで響く。
2回目は違った。希望年収を先に出して、そこから下げなかった。
妥協しないためには、基準の数字がいる
とはいえ「妥協するな」と言われても、いくらと言えばいいのか分からない。1回目の俺がまさにそうだった。
自分の相場を知らないから、提示された数字が高いのか安いのかも判断できない。だから飲むしかなかった。
オファーを受けるかどうかを決める前に見ておくものです。基準が無いまま提示額を見ると、高いのか低いのか判断できません。
診断額はやや高めに出る印象があるので、鵜呑みにはしない方がいい。それでも大きく開いているなら、いまの場所以外に正しく評価するところはあると考えていい。
方法② 大手を受ける
これは2回目にやってみて初めて分かったことだ。
2回目の転職では、大手と中小の両方を受けた。
あくまで体感だが、中小の方がやはり提示は少ないと感じた。
一方で大手は、希望した金額より多く提示してくれることがあった。こちらが言った額を上回ってくるのだ。1回目の転職では一度も無かった経験だった。
経歴は同じだ。話した内容も同じだ。違うのは受けた相手だけだった。
身も蓋もないが、年収を上げたいなら大手も受けた方が早いと思う。会社が払える原資そのものが違う。
中小がダメだと言いたいわけじゃない。俺自身、SE時代は少人数の会社にいて、そこで要件定義もPM補佐も経験させてもらった。上が詰まっていなかったから任された。
経験を積むなら小さい会社、年収を上げるなら大手。目的で使い分けるものだと思っている。
ただし、大きさだけで決めないでほしい
ここは強く言っておきたい。
周りの目や、見栄や、ネームバリューだけで決めないこと。
大手を受けろと書いたのは、あくまで金額の話だ。名前が知られている会社に入ったからといって、自分の毎日が良くなるとは限らない。
絶対に、仕事の中身を見て決めてほしい。
俺は新卒のとき、地元で名前の通った会社という理由で選んで失敗している。同じことを、年収という別の看板で繰り返してほしくない。
そもそも、比べる相手がいないと妥協しているかも分からない
この違いに気づけたのには理由がある。受けた数だ。
1回目の転職では80社に応募した。2回目は130社出している。
数を増やしたのは、自信があったからじゃない。落ちる前提だったからだ。未経験のときも、キャリアアップのときも、そこは変わらなかった。
ただ、結果として良かったのは比較ができたことだった。
同じ経歴を出しているのに、会社によって返ってくる金額が違う。並べて初めて「この提示は低いな」「これは高いな」が分かる。
もし1社だけ受けて内定をもらっていたら、俺はその金額を「これが自分の相場だ」と思い込んでいたと思う。1回目がまさにそれに近かった。
妥協しないというのは、気合いの話じゃない。比べる相手を用意するという作業の話だ。
方法③ キャリアチェンジとキャリアアップを区別する
これが一番大事かもしれない。
俺は転職を2回している。同じ「転職」という言葉を使うが、中身はまったくの別物だった。
キャリアチェンジは、一旦リセットされる
1回目、物流からITへ移ったときがこれだ。
配車を3年やった経験は、IT業界では実績としてカウントされない。キャリアが一旦リセットされる。
じゃあ何を見られるのか。ポテンシャルだ。この人はこれから伸びそうか、というところを見られる。
だから年収が下がる。当たり前といえば当たり前だ。実績が無い人に高い金額は出せない。
キャリアチェンジをするなら、この構造を先に知っておいてほしい。「経験があるのに評価されない」と怒っても仕方がない。カウントされる土俵が変わっただけだ。
物流からどの職種になら移れるのかは物流からの転職先おすすめ7職種に並べてある。
キャリアアップは、経験が直に乗る
2回目はまったく逆だった。
同じIT業界の中での移動なので、SEとしてやってきたことがそのまま武器になる。要件定義もPM補佐も、説明すれば伝わる。
経験が直に反映される。だから金額も動く。
逆に言うと、こうも思っている。
同じ業界・同じ職種で転職するのに、年収が横ばいなのは意味がないんじゃないか。
経験が乗るはずの移動で乗っていないなら、何のために動くのか分からない。キャリアチェンジで下がるのは構造上しかたないが、キャリアアップで横ばいは、交渉していないだけの可能性がある。
ただし、入ってからが楽なわけじゃない
数字だけ書くと順調に見えるので、正直なところも書いておく。
正直に言うと、現職に入ってから一番驚いたのはここだ。
実際の仕事は、SIerの開発工程そのものだった。
「ITコンサル=華やかな上流工程」ってイメージ、正直あった。
でも現実は、開発未経験の技術にほぼ初めて触れる毎日。
「心が折れそう…」って、本気で思う日もある。
年収が上がるというのは、その分だけ求められるということでもある。600万という数字の裏側はこれだ。
方法④ 1社内定が出ても、そこで終わりにしない
最後がこれだ。実感としては、これが一番大きいかもしれない。
1社内定が出たからといって、転職活動を終了しないでほしい。
これだと思う会社から内定が出るまで、続ける。妥協せずに。
転職活動は、正直しんどい。仕事をしながら書類を出して、面接の日程を調整して、落ちる。これを何十社もやる。
だから内定が1つ出ると、こう思う。「これだけの内容なら、転職してもいいかなあ」と。
その気持ちはよく分かる。俺もなった。
結局は運の要素がある。だから母数がいる
身も蓋もないことを言う。
転職は結局、運だと思う。
俺はいまの会社に、もう一度受けて受かるとは思わない。面接官が誰か、そのときの質問が何かで、結果は全然変わる。実力だけで決まっているとは思えない。
運の要素があるなら、やることは1つだ。試行回数を増やす。
1社目の内定で止めるというのは、運の1回目で降りるということだ。
受けているうちに、行きたい場所が変わっていった
もう1つ、続けてよかったことがある。
自分が何をやりたいのかが、面接を受けながら変わっていった。
最初、俺が見ていたのは社内SEだけだった。客先常駐から抜けたかったので、事業会社の中に入るのがいいと思っていた。
ところが面接を受けていくうちに、こう思い始めた。
「社内SEじゃないな。面接していても、楽しそうじゃない」
話を聞けば聞くほど、自分が乗れないのが分かってきた。それで志望をITコンサルや自社開発の会社に変えていった。
机の上で自己分析していても、これは出てこなかった。実際に人と話して、はじめて分かった。
転職活動をしながら、自分のキャリアを見つめ直す。順番はこれでいいと思っている。
志望が変わっても、エージェントは怒らない
途中で希望を変えるのは悪いことだと思っていた。担当者に申し訳ない、みたいな気持ちもあった。
全然そんなことはなかった。こういうことをしても、アドバイザーは怒ったりしない。
自分の意見は伝えた方がいい。相手も一応、商売だ。こちらが決まらないと相手も困る。
逆に、自分の希望に沿わない求人ばかり出してくる担当もいる。これも実際にあった。
そういうときは我慢しなくていい。担当を変えてもらうこともできるし、エージェント自体を変えることもできる。
担当との相性は運だ。ここでも運が絡む。だったら引き直せばいい。
大手の求人は、自分で探すと出てこない
方法②で「大手を受けろ」と書いたが、問題が1つある。
未経験や異業種から大手の求人にたどり着くのは、自分で探しているとなかなか難しい。1回目のとき、俺は求人サイトを眺めているだけで何ヶ月か溶かした。
狙える範囲を先に知っておくと、走る距離が決まります。俺は最初、自分がどこまで狙えるのかを知らないまま応募していました。
2回目は、IT特化のエージェントもサブで足した
ここは1回目と変えたところなので、正直に書いておく。
1回目(未経験のとき)は、IT特化のエージェントを1つも使っていない。出せる実績が何も無くて、使える段階に立っていなかったからだ。
2回目は違った。SEとして4年やって、要件定義もPM補佐も経験があった。ようやくIT特化が使える側に回れたので、メインのリクルートエージェントに加えてサブで足した。
使った形はこうなる。
- メイン:リクルートエージェント(求人の数と、大手の枠)
- サブ:レバテックキャリア、ウズウズIT(IT特化。経歴が乗るようになってから)
- あとは転職サイトにも一応登録して、自分でも眺めていた
複数持っておくと、担当が合わなかったときの逃げ道にもなる。さっき書いたとおり、相性は運なので。
いま使えなくても、数年後の選択肢として知っておく分には損がありません。
1回目に何を使って何を使わなかったかは物流の転職エージェントおすすめに全部書いた。未経験の入口で現実的だったのはどれか、という話だ。この記事とは前提が違うので、いま未経験の人はそちらを読んでほしい。
ただし、自分で探す側をゼロにする必要はない。
リクナビNEXTのような求人サイトは、人と話さずに自分のペースで見られる。俺も1回目のときは、まずここで求人を眺めていた。
紹介される求人と、自分で見つける求人は別物だ。両方見ておくと、提示された条件が妥当かどうかを自分で判断できる。
動くかどうかの前に、確かめる順番がある
順番は4つある。
① 社内で確認する
まず、いまの年収の中身を分解する。額面だけ見ても比べられない。
- 基本給と固定残業の内訳
- 昇給の上限があるか
- 賞与が直近で実際にいくら出ているか
- 同じ職種で、社内の上の人がどこまで行っているか
全部、いまいる場所で確かめられることだ。ここが分かっていないと、外を見ても比べようがない。
② 求人を見てみる
次に、外がどうなっているかを軽く見る。
リクナビNEXTあたりで十分だ。人と話さずに並べるだけでいいし、応募しなければ何も起きない。
ここは軽くでいい。社内で比べても答えが出ないことだけ分かればいい。
③ 自分の市場価値を確認する
求人票に出ているのは募集の幅だ。その幅の中で自分がどこに入るのかは、また別の話になる。
俺が数字で見たのはミイダスの無料診断だった。⚠️ 出た金額がそのまま提示されるわけではないが、大きく離れているなら判断の材料にはなる。
人に会うのはまだ気が重い、という人はここまででいい。①〜③だけでも、いまの位置はだいぶ見える。
④ 転職エージェントに相談する
①〜③は全部、自分で見る作業だ。それでも最後に1つ残る。
いまのスキルで、実際にいくらの求人に出せるのか。
診断で出るのは平均に寄った数字だ。リクルートエージェントのように経歴を見た人が「この経験ならこの求人に出せる」と言う数字の方が、当てになる。
正直に言うと、いちばん効くのはここだと思っている。聞くだけ聞いて、動かなくてもいい。
この4つが揃うと、いまいる場所が地図の上のどこなのかが分かる。
分かってから、動くかどうかを決めればいい。
俺は1回目の転職で、年収が87万下がることを分かっていながら、その内訳までは見ていなかった。
まとめ
「年収を下げてでも転職していいのか」への答えは、あまり勧めないだ。
87万下げた本人が言っている。キャリアチェンジでも年収を上げる、せめて現状維持でやる。その方がいい。
それでも下げていいのは2つだけだと思っている。
- 移る先の業界の方が稼げる見込みがあるとき(一時的に下がっても、その業界の方が稼げるなら)
- 心がもたないとき(体や心が先に壊れるくらいなら逃げていい)
ただし生活水準を下げるのは思っている以上にしんどい。ここは軽く見ない方がいい。
そのうえで、2回目に変えた方法は4つだ。
- 年収を妥協しない。1回目は提示をそのまま飲んで、4年で37万しか動かなかった
- 大手を受ける。経歴が同じでも、中小と大手では出てくる金額が違った
- キャリアチェンジとキャリアアップを区別する。前者はリセット、後者は経験が直に乗る
- 1社内定が出ても終わりにしない。転職は運の要素があるから、母数がいる
物流3年目で400万。下げて313万。4年かけて350万。そして600万。
この線を跳ねさせたのは、下がった分を取り返す作業じゃなかった。2回目の転職だ。
1回目で下げるなら、2回目で取りに行く前提で下げた方がいい。下げたまま終わると、ただ安く働いただけになる。