「客先常駐はやめとけ」は本当か|2次請けで4年やって、当たっていたのは1つだけだった

  • 2026-08-23
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「客先常駐はやめとけ」。

調べればいくらでも出てくる。俺も4年間、客先常駐で働いていた。

先に言っておくと、俺は客先常駐だと知って入っている。面接でも説明されたし、転職エージェントからも聞いていた。

それで、どう思ったか。別になんとも思わなかった。

当時の俺は、そんな働き方の違いがあること自体を知らなかったからだ。

SESもSIerも区別がついていない。とにかく実務経験を積みたくて入った。それだけだった。

だからこの記事は、まだ入っていない人に向けて書く。内定が出た人、SESに行こうか迷っている人だ。中にいて辞めたい人向けの話は、別の記事に分けてある。

目次

先に、この記事で言えることの範囲を出しておく

「客先常駐やめとけ」で出てくる記事は山ほどあるが、書いている人がどの立場から言っているのかは、たいてい分からない。

だから先に出しておく。

  • 文系未経験からIT業界に入って、客先常駐で4年働いた
  • 自社は2次請け。客先は金融系で、間に元請けが1社
  • 4年間ずっと同じ客先。案件は転々としていない
  • 担当した工程はテスト、テストリーダー、要件定義、PM補佐
  • 入社時の社員は8人。辞めるころで12人

つまり1社・1現場・4年分の話だ。客先常駐の全部を語れる立場ではない。

逆に言うと、ここに当てはまらないことは書かない。経験していないことを、あるように書いても仕方がない。

4年やって、当たっていたのは3つのうち1つだった

「やめとけ」の理由は、だいたい3つに集約される。孤立する。スキルがつかない。給料が安い。

4年分の実測で照らすと、こうなった。

「やめとけ」の3つの理由を、4年やって照らした当たっていたのは、いちばん下の1つだけだった「孤立する」逆だった。自社の人が同じ現場にいた×「スキルがつかない」ついた。ただし理由は客先常駐じゃない×「給料が安い」当たっていた。4年で37万しか動かない上の2つが外れたのは、客先常駐だからではなく「入った会社」のおかげだった

当たっていたのは給料だけだった。

ただ、ここからが本題だ。

上の2つが外れたのは、客先常駐が良いものだったからじゃない。たまたま入った会社のおかげだった。

この区別をしないまま「客先常駐でも大丈夫だったよ」と書くと、嘘になる。順番に書く。

理由①「孤立する」→ 俺の場合は逆だった

客先常駐の代名詞みたいに言われるのが、これだ。自社の人間が誰もいない現場に放り込まれて、相談相手がいない。

俺の場合は逆だった。

  • 自社のメンバーは、全員が同じ客先に常駐していた
  • 週3で出社するので、自社の人間とは週に1回以上は必ず顔を合わせる
  • 困ったらすぐ聞ける相手がいた
  • 帰社日は無い。というより本社に一度も行ったことがない

会社は入社時で8人、辞めるころに12人。全員が同じ現場にいれば、そもそも孤立のしようがない。

正直に言うと、居心地は良かった。

でも、これは会社の話であって客先常駐の話じゃない

自社の人間が同じ現場に何人いるかは、会社によって全然違う

1人で客先に放り込まれる会社なら、世間で言われているとおりになるんだと思う。俺はそれを経験していないので、そこは想像でしか言えない。

つまり「孤立する」が当たるかどうかは、入る前に会社に聞けば分かる話だ。ここが分かれ目になる。

居心地の良さについては、4年の総括として客先常駐SEは底辺なのかに書いた。良かったからこそ辞めにくかった、という話をしている。

理由②「スキルがつかない」→ ついた。でも客先常駐のおかげじゃない

4年で担当した工程を並べると、こうなる。

4年でここまで担当が変わったただし理由は「客先常駐だから」ではない。上が詰まっていなかったからだテスト1年目〜テストリーダー2年目〜要件定義3年目〜PM補佐4年目〜社員は入社時8人。上の席が空いていたから、順番が早く回ってきた

テストから入って、テストリーダー、要件定義の主担当、最後はPM補佐まで行った。

これだけ見ると「客先常駐でもスキルは積めます」という記事が書ける。

でも、そう書いたら嘘になる。

順番が早く回ってきた理由は、会社が小さかったからだ

なぜ4年でここまで来られたのか。本当の理由はこれだ。

小さい会社で、上がそこまでいなかったから。

社員8人の会社で、要件定義をやる人間が足りなければ、4年目の俺に回ってくる。テストリーダーも同じだ。人がいないから、順番が来る。

これが上の詰まった大きい会社だったら、同じ4年でテストのままだったかもしれない。客先常駐かどうかとは関係がない。

だから「スキルがつかない」への正しい答えは、会社の規模と、上に何人いるかを見ろだ。形態を見ても答えは出ない。

ただし、決められない側からは一度も出られなかった

工程は上がった。裁量も増えた。それでも4年間、変わらなかったことが1つある。

システム化の仕様を決めるのは、いつも客先だった。

どれだけそのシステムに詳しくなっても、こちらは相談役から動かない。決定権は最後まで来なかった。

これは会社の規模の話ではなく、常駐している側の構造の話だ。ここだけは形態に張り付いている。

この「決められない側」から抜けるまでに何を考えたかは、SEに向いてない人の転職先に書いた。

理由③「給料が安い」→ これだけが本当だった

ここが本題だ。

入る前の俺が何を考えていたか、正直に書く。

「最初は薄給でも、絶対に給与を上げるんだ。給与交渉して稼げるようになるぞ」

本気でそう思っていた。実務経験さえ積めば、あとは交渉でどうにかなると思っていた。

4年後の結果がこれだ。

交渉して上げるつもりだった。4年で37万だった点線=入る前に思い描いていた上がり方/実線=実際300万400万500万思っていた線313万1年目320万2年目340万3年目350万4年目4年間の上がり幅は37万円。1年あたり1万円ちょっと

313万で入って、350万で辞めた。4年で37万。1年あたり1万円ちょっとだ。

工程はテストからPM補佐まで上がっている。仕事の中身は明らかに変わった。それでも、金額はこの動き方しかしなかった。

内訳は別の記事に書いたが、固定残業込みで、ボーナスも無かった。生活の実感まで含めた話は客先常駐SEは底辺なのかにまとめてある。

なぜ上がらないのかは、最後に会社からきちんと説明を受けた。筋の通った説明で、反論できなかった。その顛末も同じ記事に書いた。

見るべきは働き方じゃなく、商流のどこに入るかだった

ここまで書いてきて、①も②も「会社を見ろ」という話になった。

じゃあ会社の何を見るのか。俺が入る前に知らなかった軸が、1つある。

その会社が、商流のどこにいるかだ。

俺が立っていたのは、ここだった同じ「客先常駐」でも、商流のどこに入るかは会社ごとに違う金融系の客先発注する側。仕様を決めるのもここ元請け(1次請け)客先から直接受ける自社(2次請け)ここに俺がいた2次請けは、多重請負の中ではむしろ浅い方だその浅い位置でも、中で交渉して動く金額ではなかった

俺がいたのは2次請けだった。金融系の客先がいて、そこから直接受けている元請けが1社あって、その下に自社がいた。

正直に言うと、入社した時点では自分が何次請けなのかも分かっていなかった。そういう構造があることを知らなかったからだ。

なぜこれが給料の話に効くのか。構造だけ書く。

客先が1人分の作業に対して払う金額は決まっている。そこから元請けが取る分が引かれて、残りが自社に来る。自社はそこから会社の取り分を引いて、俺の給与になる。

間に入る会社が増えれば、その分だけ手前で引かれる。自社に届く時点の幅が、そもそも狭くなっているということだ。

幅が狭ければ、その中でどれだけ交渉しても動く余地は狭い。俺が4年かけて学んだのは、要するにこれだった。

ここから先は、俺の推測になる

事実と分けて書く。ここまでは実際に自分が経験したことだが、ここからは経験していない。

多重請負の構造である以上、何次請けかによって給与面もかなり違ってくるんじゃないかと思う

同じ客先常駐でも、1次請けならまた話が違うのかもしれないとも思う。

ただし、これは俺が確かめたことではない。1次請けで働いたことがないので、そうだと言い切ることはできない。

むしろ引っかかるのは、2次請けは浅い方だということだ

多重請負というと、4次5次と深いところの話が出てくる。

2次請けは、その中ではかなり浅い方だ。客先と自社の間に、会社が1つしか挟まっていない。

その浅い位置にいて、4年で37万だった。

だから「深いところにいたから安かったんだ」という話にはできない。浅くても、中で交渉して動く金額ではなかった——ここまでが、俺が事実として言えることだ。

入る前に、どこまで確認できるのか

ここまでの話を、入る前の人が使える形に落とす。

入る前に、どこまで分かるのか入る前に確認できる・何次請けか・自社の人が同じ現場にいるか・社員数と、上に何人いるか・会社の年収レンジ・固定残業が何時間込みか入ってみないと分からない・現場の人間関係・任される工程・客先が変わるかどうか・上の席がいつ空くか左が全部そろっていれば、少なくとも「やめとけ」の大半は避けられる

入る前に確認できることは、面接でもエージェント経由でも聞ける。聞いて嫌がられる質問でもない。

俺は当時、この5つを1つも聞いていない。聞くという発想が無かった。

1つずつ、何が分かるのかを書く。

①「御社は何次請けですか」

求人票に書いていないことの筆頭がこれだ。外から調べても、まず出てこない。

聞いて分かるのは、さっき書いただ。自社に届く時点でいくら引かれた後なのか。

ここが狭ければ、入ってから中でがんばっても動かせる範囲は狭い。俺は2次請けで4年やって37万だった。

ただし「何次請けまでなら大丈夫」という線を、俺は引けない。1次請けを経験していないからだ。

線を引くのではなく、知った上で入る。それだけでも当時の俺よりはずっとましだったと思う。

②「自社の人は、同じ現場に何人いますか」

「孤立する」が自分に当たるかどうかは、この質問1つでほぼ決まる。

俺の会社は全員が同じ客先にいた。だから困ったらすぐ聞けたし、週3の出社日には必ず誰かと顔を合わせていた。

もし1人で放り込まれる現場なら、話はまったく変わるんだと思う。そこは俺が経験していないので、想像でしか言えない。

この質問は、答えをはぐらかす理由が会社側にない。だから素直に返ってくる。

③「社員は何人で、上に何人いますか」

スキルが積めるかどうかは、ここでだいたい決まる。

俺のところは8人だった。要件定義をやる人間が足りなければ、4年目の人間に回すしかない。だから順番が早く来た。

上が詰まっている会社なら、同じ4年でも同じ工程のままだったかもしれない。

ただ、これは良いことだけではない。人が少ないというのは、人が足りていないということでもある。順番が早く回ってくるのと、手が足りていないのは同じことの裏表だ。

④「この会社の年収レンジはいくつですか」

天井を先に見ておく、という話だ。

求人票に書いてある上限の数字は、実際にそこへ届いている人がいる金額とは限らない。だから枠の話ではなく、いま在籍している人がどのあたりにいるのかを聞く。

俺は入る前、この数字を一度も確認していない。「実務経験と引き換えなら安くていい」で止まっていた。

前半は正しかった。だが、天井を知らずに入ったせいで、上がらない理由を知るのに4年かかった。

⑤「固定残業は何時間込みですか」

これも入る前に聞ける。

固定残業込みの給与は、その時間分をすでに含んだ金額だ。つまりその範囲で働いている限り、月々の金額は動かない

俺の給与も固定残業込みだった。この仕組みと生活の実感については客先常駐SEは底辺なのかに書いた。

入ってみないと分からないことは、正直どうにもならない

一方で、聞いても答えが出ないこともある。現場の人間関係も、任される工程も、入ってみないと分からない。

ちなみに「案件ガチャ」「客先がころころ変わる」は、客先常駐の話でよく出てくる。

これについては俺は経験していない。4年間ずっと同じ客先だったからだ。だから語れない。経験していないことを、あるように書くつもりはない。

提示された金額が安いのか、当時の俺には判断できなかった

「入る前に給与交渉しろ」と言われても、いくらが妥当なのか分からなければ交渉のしようがない。

俺は313万を提示されて、そのまま受けた。

その金額が高いのか安いのか、比べる材料を1つも持っていなかったからだ。未経験で入れてもらえるだけありがたい、くらいに思っていた。

数字を1つ持っているだけで、この受け止め方は変わったと思う。

交渉する前に、比べる数字を持つ
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俺が使ったのはミイダスの無料診断です。提示された金額と比べる基準が1つあるだけで、「その金額でいいのか」を考えられます。当時これを先にやっていれば、と思っています。
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無料/※診断で出た金額がそのまま提示される保証はありません。今の評価が全てではない、と分かれば十分です

診断額そのものは、正直やや高めに出る印象がある。鵜呑みにはしない方がいい。

ただ、大きく差が開いているなら、今の場所以外に正しく評価するところはあるとは言える。交渉のときに持っておく材料としては、それで十分だ。

交渉は、自分でやらなくていい

もう1つ、当時の俺が知らなかったことがある。

給与交渉は、自分で切り出さなくていい。

企業に直接応募すると、条件の話も自分で持ち出すことになる。内定をもらった相手に「もう少し上げてほしい」と言うのは、正直かなり気が重い。

転職エージェントを通していれば、そこに間に入ってもらえる。金額の話を代わりにやってくれる。

何次請けかのような、求人票に書いていないことを聞けるのも同じ理屈だ。外から見えないことほど、人に聞いた方が早い。

俺が未経験でIT業界に入るときに使ったのは、リクルートエージェントだった。

金額の話を、間に入ってもらう
リクルートエージェントに、条件の交渉ごと任せてしまう
俺が1回目の転職で使ったのがリクルートエージェントです。未経験で入るときほど、自分では条件を切り出しにくくなります。間に入ってもらえること自体が、入口の年収を守ることにつながります。
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無料/相談だけで終えてもいい。応募しなければ何も起きません

他にどのサービスを使って、どれを使わなかったかは物流の転職エージェントおすすめに全部書いた。未経験のときに何が現実的だったかの話だ。

入る前の自分に、一言だけ言えるなら

もし4年前の自分に会えるとして、言えることが1つだけだとしたら、これだ。

「自分を安く売るな」

あのときの俺は、提示された金額をそのまま受けた。実務経験と引き換えなら安くていい、あとで交渉すればいいと本気で思っていた。

前半は正しかった。実務経験は積めた。テストから要件定義まで、ちゃんと経歴になった。

後半が違った。あんまり変わらん。

一度安く入ると、そこから上げてもらうのは難しい。上げ幅の話ではなく、出発点がそこに固定されるという話だ。

安く入ると、その次まで引きずる

もっと厄介なのはここだった。

次に転職するときも、今の給与をベースに見られる。

前職がいくらだったかを聞かれ、そこを起点に話が始まる。安く入るというのは、その会社にいる間だけの話じゃない。次の一手まで引きずるということだ。

俺は87万下げてIT業界に入った。未経験なんだから仕方ないと思っていた。

でも、その低い数字が、そこから4年間ずっと出発点になり続けた。

下げすぎたと思っている。自分を安く売りすぎた、というのが今の正直な感想だ。

だから、入る段階で交渉しておけ

「入るな」とは言わない。俺は未経験からIT業界に入るのに、あの入口を使った。使えるものは使った方がいい。

言いたいのは順番の話だ。交渉するなら、入ってからじゃなく入る前だ。

入る前なら、相手はまだこちらを採りたい側にいる。入った後は、こちらが上げてもらう側になる。同じ交渉でも、立っている場所がまるで違う。

そして、その交渉は自分ひとりでやらなくていい。エージェントを通していれば間に入ってもらえる。

できる限り年収を上げた状態で入る。これが、4年やって俺が一番言いたいことだ。

実際に辞めると決めてから動くまでに何をしたかは、客先常駐をやめたい人へに書いた。焦って辞める必要はない、という話をしている。

まとめ

「客先常駐はやめとけ」の理由を、4年分の実測で照らした。

  • 孤立する … 俺の場合は逆だった。自社の全員が同じ現場にいた
  • スキルがつかない … ついた。テストからPM補佐まで来た
  • 給料が安い … これだけが当たっていた。4年で37万

ただし上の2つが外れたのは、客先常駐だからではない

孤立しなかったのは自社の全員が同じ現場にいたから。スキルが積めたのは会社が小さくて上が詰まっていなかったからだ。どちらも会社の話で、形態の話じゃない。

だから「客先常駐はやめとけ」に、はいともいいえとも答えられない。会社によるとしか言えない。

見るなら、その会社が商流のどこにいるかだ。俺は2次請けだった。多重請負の中では浅い方だが、それでも中で交渉して動く金額ではなかった。

何次請けかで給与がどう違うかは、俺が確かめたことではないので言い切らない。ただ、構造上かなり違ってくるんじゃないかとは思っている。

入る前に確認できることは、思っているより多い。何次請けか。自社の人が同じ現場にいるか。上に何人いるか。年収レンジ。固定残業。

俺は、1つも聞かずに入った。

そして提示された金額を、そのまま受けた。

入ってから交渉すれば上がると思っていたが、そうはならなかった。安く入った分は、その会社にいる間だけでなく次に動くときの出発点にもなる

交渉するなら入る前だ。自分を安く売るな。

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