客先常駐を4年やって、その会社を辞めた。
先に正直に書いておく。
俺は「やめたい」と思ったことが、たぶん一度もない。
きついとも思わなかったし、職場は本当に居心地が良かった。
困ったらすぐ相談できる人がいて、重い責任を負う立場でもなくて、残業もほとんどなかった。
それでも辞めた。
辞めたいから辞めたんじゃなくて、このままだとまずいと思ったから辞めた。
正確に言うと「辞めたい」じゃなくて、「転職しないと」という使命感だった。
この記事に書くのは、そこから実際に会社を出るまでの順番だ。
きっかけの日から内定まで、1年1ヶ月かかっている。
そのうち本気で転職活動をしていたのは、最後の1ヶ月半くらいだ。
残りの期間は、待っていた。
そして今も、あの待ち時間は正解だったと思っている。
先に結論。やめたい日に、辞めなくていい
「客先常駐 やめたい」で検索してここまで来た人に、いちばん先に言いたいことを書く。
- 今日できるのは、辞めることじゃなくて調べることだ
- エージェントに登録するのは、退職届を出すのとは全然違う
- 経歴書に書けるものが1行増えるまで待つのは、逃げじゃなくて準備だ
俺が登録したときの転職希望度は、30%くらいだった。
7割は「たぶん残るんだろうな」と思っていた。
それでも登録して正解だった。
5ヶ月後に本気になったとき、もう手続きが終わっていたからだ。
きっかけは事件じゃなくて、2回の雑談だった
客先常駐を辞めた話をすると、何かひどい目に遭ったんだろうと思われる。
でも、何も起きていない。
パワハラもなかったし、炎上案件に放り込まれたわけでもない。
きっかけは、2回の雑談だ。
3月、同期に「いつまでこの会社にいる?」と言われた
同期が別の案件に移ることになった。
その流れで、なんとなくこんな話になった。
「いつまでこの会社にいる?」
聞かれて初めて、自分が何も考えていなかったことに気づいた。
同期の方は、もう決めていた。
経験を積んだら辞めるつもりだと言っていた。
「1年、今回の新しいプロジェクトを積んだら」と、期限まで持っていた。
その場では「そっかー」で終わった。
でも、この会話は5ヶ月間、頭の片隅に残り続けることになる。
8月、後輩とご飯に行った
5ヶ月後、後輩と飯を食いに行った。
そこでうちの会社は給与が低いという話になって、やたら盛り上がった。
聞いてみて分かったことがある。
- みんな、前職から年収を下げて転職してきていた
- 給与交渉をしても、うまく上がらなかった
自分だけの話じゃなかった。
会社の中に、同じことで黙って悩んでいる人が普通にいた。
その日、はっきり言葉になった感覚がある。
居心地はすこぶるいいけど、安く買い叩かれるんかな。
3月はなんとなくだった。
8月に、それが確信に変わった。
「安く買い叩かれてる」の正体は、業務中に寝るあいつだった
この気持ちには、実は具体的な顔があった。
同じ会社に、業務中にしょっちゅう寝る後輩がいた。
一度や二度じゃない。
上司に相談して注意してもらったこともあるし、俺からも直接言ったこともある。
直らなかった。
うちは全員が同じ客先に入っていた。
だから自社の人間とは、全員と顔を合わせる。
あいつが寝ているところも、当然よく見えた。
毎日だ。
あいつも同じ会社の所属なんだ。給与もらってんだ。
なんか嫌だな、という気持ちが前々からあった。
そのあと、上司から給与がどう決まるのかを聞く機会があった。
その説明を聞いていて、ひとつ引っかかった。
全然できない年上の後輩の方が、俺より貰ってるんじゃないか。
言っておくと、これは確かめたわけじゃない。
誰かに「あいつの方が高いよ」と言われたわけでもない。ただの推測だ。
でも、一度そう思い始めたら止まらなかった。
自分がどれだけちゃんとやっても、寝ているあいつと同じ器の中にいる限り、
その差は値段に反映されないんじゃないか。
客先常駐で「安く買い叩かれてる」と感じるときの中身って、たぶんこれだ。
金額そのものより、差がつかないことがしんどい。
飲みの1ヶ月後、エージェントに登録した。希望度は30%
8月に後輩と飯を食って、9月には転職エージェントに登録していた。
1ヶ月経っていない。
仕事は忙しかった。
でも、なぜかここだけは早かった。
目的は転職じゃなくて、相談だった
登録した理由は、はっきりしている。年収だ。
年収を上げたい。
じゃあ今の自分のスキルで、どのくらいのアップが望めるのか。
それを聞きたかった。
求人を紹介してほしかったわけじゃない。
値札を知りたかっただけだ。
だから、この時点の転職希望度は30%くらいだと思う。
残りの7割は「まあ、残るんだろうな」だった。
登録は、退職届じゃない
ここを勘違いしている人が本当に多い。
エージェントに登録しても、会社に連絡はいかない。
面談をしても、応募しなければ何も起きない。
俺は登録してから面談までに1ヶ月かかった。
その1ヶ月、何をしていたかというと普通に業務に集中していた。
やめたい気持ちを抱えたまま、何もしないで数年過ごすのがいちばんきつい。
登録だけしておくと、「いつでも動ける」という状態が手に入る。
それだけで、職場の見え方がちょっと変わる。
それでも9ヶ月、辞めなかった。居心地が理由じゃない
9月に登録して、内定が出たのは翌年の4月中旬。
登録から8ヶ月かかっている。実際に会社を辞めるまでだと9ヶ月だ。
「居心地が良かったから動けなかったんでしょ」と言われそうだけど、違う。
計算していた。
マネジメントを経験できる案件の、真っ最中だった
その頃の俺は、PM補佐の案件を抱えていた。
それまで俺がやってきたのは、テストと要件定義だけだ。
マネジメント側の仕事は、これが初めてだった。
つまり経歴書に書けるものが、いま増えている最中だった。
ここで抜けたらどうなるか。
「マネジメントをやりかけた人」で外に出ることになる。
この案件のリリースまでやれば、経歴書に書ける。
そのリリースが、半年後だった。
開発ベンダーが作っている間に、転職活動をした
ここは客先常駐ならではの話かもしれない。
開発ベンダーに発注したあと、向こうが作っている期間はこちらの手が少し空く。
10月からの転職活動は、この合間でやっていた。
平日の夜に職務経歴書を書いて、土日に面接を入れる。
無理をした記憶はあまりない。
待っていたんじゃなくて、書けるものを1行増やしながら準備していた。
この半年をサボったと思ったことは一度もない。
「やめたい」って、社内で言っていいのか
これは実際に俺がやらかした側なので、正直に書く。
俺は後輩に言った。
言ってしまったあと、良かったこともある。
有言実行しなきゃという気持ちになった。
一人で抱えていると、いくらでも先延ばしにできる。
誰かに言った瞬間、それが少しやりにくくなる。
でも、言うべきじゃない。
社内で言うと、いつ誰に広がるか分からない。
自分の口から出た時点で、もうコントロールできない。
俺の場合、たまたま条件が揃っていただけだ
- 絶対に言わないだろうと確信できる相手だった
- 本人も転職を悩んでいた(つまり利害が同じだった)
この2つが揃っていたから事故らなかった。
運が良かっただけで、おすすめできる話じゃない。
言うなら、順番がある
順番はこれだけ守ればいい。
言うのは、絶対に上司に辞める意向を伝えてからだ。
先に同僚へ流れると、自分が話す前に上司の耳に入る。
そうなると、辞めるかどうかの話じゃなく「隠していた」話になってしまう。
4年いて、辞めた人は1人もいなかった
これは書いておきたい。
俺がいた4年間、会社を辞めた人は1人もいない。
入社したとき8人で、辞めるときには12人に増えていた。
理由は分かる。働きやすいからだ。
- 休みやすい
- 家庭の事情を言えば、ちゃんと休みを取らせてくれる
- 用事がある日はリモートに切り替えてくれる
これ、けっこうすごいことだと思う。
前職の物流時代は、休みの日も携帯が鳴っていた。
でも、給与で悩んでいる人はいた。
同期と、後輩が1人。
みんな地元を出て都内で働いている。
給与が低い状態に、満足するはずがない。
だから、こういう会社は難しい。
辞める理由が見つからないまま、年数だけが増えていく。
働きやすい会社であることと、自分の10年後がどうなるかは、別の話だ。
居心地の良さそのものについては客先常駐SEは底辺なのか|居心地は良かったが4年で辞めたに詳しく書いた。
いくらなら残るのか、を先に決めた
感情で辞めたくなかったので、金額の線を先に引いた。
残るなら450万、出るなら500万以上。この2本だ。
この記事で書きたいのは、金額そのものじゃなくてなぜその数字だったのかの方だ。
500万は、生活のシミュレーションから出した
今の生活を維持して、そこにいくら貯金を足したいか。
それを計算したら、だいたい500万だった。
あともう1つ理由がある。
転職にはリスクがある。環境も人間関係も一度リセットされる。
そのリスクを負うなら、これくらい貰わないと割に合わないと思った。
450万は、やっている仕事の値段として出した
残る場合の下限が450万。
当時の年収が350万だったので、100万上げてもらわないと残らないということだ。
根拠は業務内容だ。
テストから始まって、要件定義を主担当でやって、いまはPM補佐まで来ている。
やっている中身に対して、350万は合っていない。
もう1つ、頭の隅にあったのがさっきのできない年上の後輩の話だ。
あいつより下かもしれない、という疑いを抱えたまま働き続けるのは嫌だった。
確かめようがない話だからこそ、金額でしか解消できない。
だからこの450万は、我慢代でも生活費でもない。
やっている仕事の値段として、これくらいは要るという線だった。
この2本の線を持って年度末の面談に臨んだ結果どうなったかは、
客先常駐SEは底辺なのかの後半に全部書いてある。
2月末に会社と話してから、本気になった
翌年の2月末、年度末の面談で辞めることも含めて会社と話をした。
結論から言うと、提示された金額は自分で引いた線に届かなかった。
会社が悪いとは思っていない。筋の通った説明もあった。
ただ、そこで決まった。
そこからは有給を使って本格的に転職活動をした。
内定が出たのは4月中旬だ。
本気で動いた期間は、実質1ヶ月半くらいしかない。
その1ヶ月半が成立したのは、5ヶ月前に登録だけ済ませてあったからだ。
職務経歴書もエージェントとの関係も、その時点でできあがっていた。
最終的に出たオファーは、自分で引いた500万の線を100万上回った。
そこまでの流れは物流からの転職方法|物流→SE→ITコンサルで年収600万円に書いてある。
客先常駐をやめたいと思っている人が、今日やっていいこと
順番だけ間違えなければいい。
俺がやった順に並べるとこうなる。
- いま感じていることに名前をつける(俺の場合は「安く買い叩かれるんかな」だった)
- エージェントに登録して、自分の値札を聞く。ここまでは会社に何の影響もない
- 残るならいくら、出るならいくら、と線を2本引く。感情で決めないため
- 経歴書に書けるものを1つ仕上げてから動く。9ヶ月かかってもいい
- 辞める意向は、同僚より先に上司へ。順番を逆にしない
1と2は、今日できる。
3から先は、来年でもいい。
まとめ:やめたい日と、辞める日は別でいい
客先常駐をやめたいと思ったとき、俺がやったのはこれだけだ。
- きっかけは事件じゃなく、同期と後輩との2回の雑談だった
- 転職希望度30%のまま登録した。登録は退職届じゃない
- 登録から辞めるまで9ヶ月かけた。あれは逃げじゃなく準備だった
- 「やめたい」を社内で言うなら、上司が先。俺は順番を間違えた
やめたいと思った日に辞められなくても、何も悪くない。
その日にできるのは、辞めることじゃなくて調べることだ。
居心地が良い職場ほど、抜けるきっかけが来ない。
だからこそ、動ける状態だけ先に作っておくといい。
年収が下がる転職をどう受け止めたかは給料が下がっても転職してよかったと思える理由、
そもそも未経験でIT業界に入るところの話は未経験からIT転職するロードマップに書いてある。