「運行管理 きつい」で検索したってことは、たぶん今しんどい。
もしくは、これから運行管理をやろうか迷っているところだと思う。
俺は物流会社で丸3年、配車をやって辞めた。
年収は3年目で400万まで行った。同世代と比べて、そんなに悪い数字じゃない。
それでも辞めた。
この記事では「運行管理はきつい」を根性論で終わらせずに、何が、どうきついのかを全部分解する。
先に結論を書いておく。
きついのは仕事量じゃない。
1つの仕事を、最後までやりきれないことだ。
先に:この記事で言う「運行管理」の範囲
「運行管理」と「配車」は、求人票だと別々に書いてあることがある。
でも現場だと分かれていない。配車という仕事の中に、運行管理が入っている。
俺のいた会社では、この仕事をまとめて「配車」と呼んでいた。
実際にやっていたのは、この範囲だ。
- 乗務員へのその日の配送指示・集荷指示
- 翌日・週次・月次の配車表の作成
- 配送指示書の作成
- その荷物が運べるかどうかの可否判断
- 新規の配送先のルート確認・搬入口の確認・そもそも車両が進入できるかの確認
- 乗務員ごとの運行管理
- 乗務員ごとの収益管理
- 乗務員ごとの労務管理
- 車両ごとの車検・3ヶ月点検の管理
- 自社倉庫への卸しがある日は、荷下ろし作業の手伝い
これが全部、1人に乗る。
「運行管理だけをやる人」は、少なくとも俺のいた会社にはいなかった。
呼び方は会社によって変わるので、ここから先は、この仕事全体をまとめて「運行管理」と書く。
「配車」で探してきた人も、指しているものは同じだと思って読んでほしい。
なので、この記事で書く「きつさ」はこの範囲を1人で回している人の話になる。
大手で完全に分業されている会社なら、事情はちょっと違うかもしれない。
運行管理の1日は、実際どうなっているか
定時は10時から19時だった。
数字だけ見れば、普通の会社員と変わらない。
でも実態はこうだ。
朝、家を出る前に電話が鳴る。
ドライバーからだ。「事故渋滞で30分遅れる」
そのまま荷主に電話して、到着が遅れる見込みを伝える。
まだ出社もしていない。
10時。パソコンを開く前に、昨日の積み残しを確認する。
確認している途中で電話が鳴る。
荷主だ。「明日の便、1件増やせますか」
増やせるかどうかは、車が空いているかで決まる。
空いていなければ、庸車(よう車=他社のトラック)を手配する。
その電話をかけている間に、また別の電話が入る。
これが19時まで続く。
一番きつかったのは、残業が長かったことじゃない。
「今日、自分は何をしたんだろう」と思いながら帰る日が、何日も続いたことだ。
運行管理の仕事がきつい5つの理由
3年やって、きつさの正体はこの5つだったと整理できた。
① 電話が鳴り止まなくて、自分の仕事が一度も進まない
本来やるべきことは、さっき並べた通り10項目くらいある。
翌日の配車表、配送指示書、乗務員ごとの労務と収益、車両の点検スケジュール。
どれも頭を使うし、どれもまとまった時間が要る。
分かりやすいのは、新規の配送先が入ったときだ。
地図を開いてルートを確認して、搬入口がどこにあるかを調べて、そもそもうちの車が入れる道なのかを確認する。
入れないと分かれば、車格から組み直しになる。
これを、電話の合間にやる。
でも、その時間が来ない。
遅延の連絡、積地の変更、荷主からの追加依頼、庸車の空き確認。
全部、電話で来る。
そして全部、今すぐ返事をしないといけない。
組みかけの配車表を開いて、5分で電話。
戻ってきて、どこまでやったか思い出すのに2分。
また電話。
「集中させてくれ」って、何回思ったか分からない。
② ドライバーと荷主の板挟みになる
荷主は「今日中に運んでほしい」と言う。
ドライバーは「もう時間がない」と言う。
上は「庸車を使うな、コストが上がる」と言う。
全員が正しい。
そして、全員を満足させる答えは存在しない。
どこかに無理を通すしかなくて、通した先から恨まれる。
ドライバーに無理を言えば、次から協力してもらえなくなる。
荷主の依頼を断れば、営業から詰められる。
しかも、トラブルのときに謝るのは全部こっちだ。
しかもこれは「クレームの電話を取る」話じゃない。
到着が遅れそうだと分かった時点で、こっちから荷主に電話する。
渋滞でも、積み忘れでも、かけるのは運行管理。
自分が起こしたわけじゃないトラブルを、自分の口から報告して、自分が謝る。
しかも、まだ何も起きていない段階でだ。
「なんで俺が謝ってるんだろう」って思う日は、普通にある。
③ トラックが1台欠けるだけで、全部が崩れる
配車は積み木みたいなもので、1台の予定が崩れると、その車が受け持つはずだった全部が宙に浮く。
当日、ドライバーが体調を崩した。
車が故障した。
それだけで、前日に組んだ配車は無になる。
限られた時間の中で、最善を考えるしかない。
他の車に振り分けられないか計算して、無理なら庸車を探す。
探すのは電話だ。1社ずつかける。
それでも見つからないと、最後は上司にお願いすることになる。(笑)
4T車は、上司の年代だと普通免許で乗れるからだ。昔は積載量の区分が違った。
申し訳ないと思いながら、「ラッキーだな」とも思ってしまう。
一度、聞いてみたことがある。
「今後のために、大型取った方がいいですか?」
返ってきたのはこれだ。
「やめとけ。俺みたいに配送させられるぞ。大型なんて取ったら遠距離も行かされる」
「確かに」と思って、それ以上は言うのをやめた。(笑)
この「いつ崩れるか分からない」感覚が、地味に一番削られる。
休みの日、ドライバーが出発する朝に電話が鳴ると、内容を聞く前に胃が痛くなる。
④ 残業は月20時間までしか付かなかった
会社のルールで、月20時間を超える残業申請は事実上通らなかった。
実際には30時間くらい働いている月でも、付くのは20時間分だ。
残りの10時間は、どこにも記録されない。
しかも、お盆と年末年始は「会社の休み」ということになっていたが、実態は有休を消化させられていた。
休みたい日に休むための有休は、ほとんど残らない。
「サービス残業」って言葉は知っていたけど、自分がやってるとは思っていなかった。
気づいたのは、3年目に転職サイトを眺めていたときだ。
⑤ どれだけ回しても、昇給は月7,000円
昇給は基本給に月7,000円。
年に直すと8万4,000円だ。
1年目が200万、2年目が350万、3年目が400万。
数字だけ見れば伸びている。でもこれは、1年目が4月入社で9ヶ月分しかなかったのと、賞与が付いた分が大きい。
実際の積み上がり方は、月7,000円のペースでしかない。
この計算をした日のことは、はっきり覚えている。
15年やっても、いま隣に座っている上司の年収にしかならない。
その上司は、俺と同じように電話を取って、車が足りない日は自分で4T車に乗っていた。
「この仕事がきついかどうか」より、そっちの方が怖かった。
3年やって分かった、向いている人と向いていない人
同じ職場でも、平気そうな人と、俺みたいに削られる人がいた。
何が違ったのかを、あとから考えて言語化するとこうなる。
向いている人
- 作業が中断されても、平気で戻れる人。これが一番でかい。電話で切られてもイラっとしない人は強い
- 断るのが上手い人。「できません」を角を立てずに言える人は、板挟みで潰れない
- その日その日で完結できる人。翌日に持ち越さず、帰ったら忘れられる人
- 人と話すのが苦じゃない人。1日の大半が対人のやり取りなので、ここが嫌だと単純に地獄
向いていない人
- 1つのことに集中して仕上げたい人。俺はこれだった。中断されるたびに削られる
- 誰かに嫌な思いをさせるのが苦手な人。運行管理は、毎日どこかに無理を通す仕事になる
- 休みの日に仕事のことを考えたくない人。電話は土日でも鳴る
- 数年後の自分の姿を、具体的に描きたい人。⑤で書いた通り、そこが一番描きにくい
念のため書いておくと、これは能力の話じゃない。
向いていなかったからといって、仕事ができないわけじゃない。
俺は配車で身につけた段取りと調整のやり方を、今の仕事でも普通に使っている。
合わなかったのは仕事の中身じゃなくて、働き方の方だった。
それでも運行管理を続けるなら、明日からできること2つ
先に書いておくと、俺は結局辞めた。
だから「続ければ報われる」とは言えない。
ただ、辞めると決めるまでの間にやって、実際にラクになったことが2つある。
すぐ辞められる人ばかりじゃないと思うので、そっちを先に書く。
① 電話で受けた情報を、その場で1か所に落とす
運行管理がきつい理由の半分は、情報が全部「口頭」で来ることだ。
電話で聞いて、メモ用紙に書いて、頭で覚えておく。
この状態だと、電話を1本取るたびに脳のメモリが減っていく。
俺がやったのは、受けた内容を全部Excelの1シートに落とすことだった。
車番、荷主、変更内容、時間、誰から。それだけ。
慣れてくると、同じ入力を毎日やっていることに気づく。
そこでExcelの関数とVBAを独学で覚えて、入力と転記を自動化した。
結果、1日30分は削れた。
30分と聞くと小さく感じるかもしれないけど、その30分は「電話が鳴らない30分」だ。
配車を組む時間が1日1回だけでも確保できるのは、体感がまるで違う。
② 「自分にしか分からない」状態を、意図的に壊す
運行管理は属人化しやすい。
どの荷主がどこまで融通が利くか、どのドライバーに何を頼めるか。
そういうのが全部、担当者の頭の中にしかない。
本人からすると、最初はちょっと気分がいい。
「俺がいないと回らない」って思える。
でも、これは自分の首を絞めている。
休めないし、休んでも電話が鳴るし、辞めるときも辞めさせてもらえない。
だから①のシートは、自分用のメモじゃなくて他の人が読める形にしておく。
これは会社のためじゃない。自分が休むためだ。
配車の属人化については、辞めるまでの流れも含めて配車から逃げた話に書いた。
「きついのは自分だけなのか」が分からないのが一番しんどい
運行管理をやっていて一番つらかったのは、比較対象がなかったことだ。
周りも同じように電話を取っている。だから、これが普通なんだと思ってしまう。
俺が最初にやったのは、転職活動じゃない。
自分の経歴が、外からいくらに見えるのかを調べただけだ。
結果を見て「思ったより低いな」と思ったけど、それでよかった。
少なくとも、頭の中だけで考えるのはやめられた。
俺は丸3年で辞めて、年収が87万下がった
3年目に転職活動を始めて、丸3年働いてから辞めた。
IT業界に未経験で入って、年収は400万から313万に下がった。マイナス87万だ。
正直、こたえた。
手取りは20万を切って、家賃7万が重かった。
物流時代は社宅で、自己負担が月5,000円だったから、その差もそのまま効いた。
それでも後悔していない理由は1つだけで、電話が鳴らなくなったからだ。
休みの日に、仕事のことを考えなくて済むようになった。
朝から晩まで誰かの都合で予定が崩れることもなくなって、自分の仕事を最後までやりきれる。
これは年収87万分の価値があったと、今でも思っている。
ただ、これは俺の場合の話だ。
年収が下がっても平気かどうかは人によるし、下げずに動く道もある。
物流の経験がどこで使えるかは物流からの転職先おすすめ7職種に職種ごとに整理した。
運行管理に限らず「総合職として物流にいるのがきつい」なら物流総合職がきつい4つの理由の方が近いと思う。
動くなら、今日やることは1つでいい
転職活動って、一気にやろうとすると絶対に止まる。
運行管理をやりながら、職務経歴書を書いて求人を見て面接の日程を組む、なんて無理だ。
俺も何度も止まった。
だから最初は、人に話すだけでいい。
俺の場合、エージェントに「未経験の業界に行きたい」と伝えたところから始まった。
そこで「プログラミングの経験も学習実績もないと厳しい」と、はっきり言われた。
きつい言われ方だったけど、何が足りないのかが分かっただけで、動けるようになった。
まとめ
運行管理の仕事がきつい理由を、もう一度並べておく。
- ① 電話が鳴り止まなくて、自分の仕事が一度も進まない
- ② 荷主・ドライバー・会社の板挟みで、全員を満足させる答えがない
- ③ トラックが1台欠けるだけで、組み終わった予定が崩れる
- ④ 実働30時間でも、残業申請は月20時間まで
- ⑤ 昇給は月7,000円。3年で400万に届いて、そこから絵が描けない
この5つのうち、①〜③は仕事のやり方で少しは軽くできる。
Excelに寄せる、属人化を壊す。それで完全になくなりはしないけど、確実にマシになる。
でも④と⑤は、個人の工夫ではどうにもならない。
会社の制度と、業界の給与水準の話だからだ。
だから判断はシンプルで、きつさの原因が④⑤に寄っているなら、場所を変えるしかない。
俺はそう判断して、年収87万を落として出た。
物流業界そのものをどう見ているかは物流業界はやめとけ?「負け組」なのかに書いてある。
今つらいなら、そっちも読んでみてほしい。