「意外と物流業界って安定してるよ。うちはBtoBだから土日休みだし」
就活のとき、人事の人は笑ってそう教えてくれた。地元の会社で、話しやすくて、いい人そうだった。
この会社なら大丈夫だろう。そう思って入った。
入社した年の夏、俺は40℃を超えるコンテナの中で、30kgの荷物を手で降ろしていた。
総合職で入ったはずだった。
後悔した。本気で後悔した。
ただ、何年か経って分かったことがある。悪かったのは会社じゃない。
後悔の正体は、会社選びのミスじゃなかった
先に結論を書く。
選ぶ基準を、自分で持っていなかった。それだけだ。
基準が無いまま選んだから、入ってから「思っていたのと違う」が出てくる。思っていた中身が、そもそも自分の中に無かったからだ。
この記事では、俺が後悔した4つと、いま就活をやり直せるなら何を見るかを書く。あと、後悔したときにすぐ辞めるべきかどうかも。
先に言っておく。人事は嘘をついていなかった
こういう話は「人事に騙された」で終わらせると気持ちがいい。でも、それだと同じことを繰り返す。
実際のところ、あの人は嘘をついていない。
会社全体で見れば土日休みは多かった。ただ俺が配属された先が、たまたまそうじゃなかった。それだけだ。
土曜は出社。祝日は午後から出社。有給は年5日の義務があるが、会社が指定した日にしか取れない。休みの日でも携帯は鳴る。
じゃあ、どうすれば見抜けたのか。
じつは、見抜くも何も書いてあった。
求人票に年間休日105日と書いてあった。俺はその数字を見ている。面接で聞くまでもない。
見落としたんじゃない。105日がどれだけ少ないのか、想像できていなかっただけだ。
105日だと、実際にはこうなる。
- 土日に加えて祝日がある週は、その分どこかで土曜が出勤になる
- お盆も、正月も、年末年始も、ゴールデンウィークも無い
- 長期休みというものが存在しない。あったとしても、どこかに皺寄せが来ているだけだ
入ってみて初めて分かった。これは想像以上にきつい。
世の中が休みなのに、自分は働かなきゃいけない。
しかも世の中が働いているときは、自分ももれなく働いている。
連休のニュースが流れるたびに、自分だけ別の暦で生きている気がしていた。
転職した先は125日だった。20日しか違わないように見えるが、生活はまるで変わった。
休みというのは、思っているよりずっと貴重だ。数字を見るとき、そこまで想像した方がいい。
新卒入社で後悔した4つ
後から効いてきたのは、この4つだった。
① 働き方
一番きたのはここだ。
4月に入社して研修が3週間。5月に配属先が決まって、地元とはまるで離れた場所へ行った。
6月から任されたのは、倉庫の中でダンボールをひたすら解体する仕事だった。8月いっぱいまで続いた。土曜はコンテナから荷物を降ろす作業を毎週やった。
休みの日も携帯が鳴る。「あの荷物どこ?」「ちょっと連絡取ってくれや」。
働き方というのは、勤務時間の話だけじゃない。仕事が自分の生活のどこまで入ってくるかの話だ。ここを俺は一度も考えていなかった。
② 仕事の内容
「総合職で入ったんだから、現場作業はないでしょ」と思っていた。
甘かった。
配車をやると言われて入ったのに、最初の半年は倉庫作業だった。配車をやるようになってからも、倉庫作業もドライバーの補助も積み降ろしも全部やった。
スーツでも革靴でもない。作業着と安全靴だ。
その配車という仕事が実際どういう中身なのかは、運行管理の仕事がきつい5つの理由に1日の流れごと書いた。
③ 会社の名前
地元では名前の通った会社だった。親も安心していた。
ただ、外に出た瞬間にその名前は効かなくなる。転職活動で、会社の名前で有利になったことは一度も無かった。
聞かれるのは何をやってきたかだけだった。
④ 周囲の目
これは自分でも情けないと思うが、正直に書く。
土曜の仕事終わりにSNSを開いたら、高校の同級生が彼女と旅行に行っていた。大学の友達は飲み会をやっていた。会社の同期はBBQをしていた。
コロナ禍が始まって、友達から電話が来た。リモートワークで働いていると聞いた。
炎天下のコンテナの中で汗だくになっている自分と比べて、しんどくなった。SNSを全部消した。
「就職ちゃんとすればよかった。俺は負け組なんだ」と本気で思った瞬間だった。
このときの感情は物流はやめとけ?就職したら負け組かに全部書いた。物流という業界そのものの話はそっちにまとめてある。
なぜ選び方を間違えたのか
答えははっきりしている。
そもそも真剣に考えていなかった。流れのままだった。
高校は自宅から一番近いという理由で決めた。大学は名前である程度決めて、第一志望に落ちた。就活は、周りが始めたから遅れないように始めた。
どこにも「自分がこうしたいから」が無い。
この状態で会社を選べば、そりゃ後悔する。会社が悪いんじゃなくて、選ぶ側に基準が無かった。
もう1つ。他人の希望と自分の希望が混ざっていた
就職するエリアを決めたのも、正直なところ自分の意志じゃなかった。
親が地元に戻ってきてほしそうだった。
はっきり言われたわけじゃない。でも伝わってくる。就活の話をするたびに、地元の会社の名前が出てくる。
ただ、俺自身は地元で働くのは嫌だった。狭いし、知り合いばかりだし、そこで一生終わるのかと思うとしんどかった。
それで出した答えがこれだ。
「転勤がある会社なら、最初は外に出られて、最終的には地元にも戻れるかもしれない」
我ながら器用に折り合いをつけたつもりだった。
結果どうなったか。地元とはまるで離れた場所に配属された。戻れる保証なんてどこにも無かった。
親の希望と自分の希望を足して2で割ったような選び方をすると、こうなる。どちらの希望も叶わない。
親を責める気はまったく無い。心配してくれていただけだ。ただ、誰の希望で選んでいるのかを分けておくべきだった。
それでも、軸は持って就活をしろと言いたい
就活の記事はどれも「自分の軸を持て」と書いてある。
当時の俺に、そんなものは無かった。やりたいことも無かったし、無くて当然だと思っていた。
それでも、はっきり言いたい。
軸は持って就活をした方がいい。
自分ができなかったことを勧めるのは格好悪い。でも、できなかったからこそ言える。適当に選ぶと、あとで全部自分に返ってくる。
とくに業界だ。ここだけは適当に選ぶな。
じゃあ、どうやって持つのか。「やりたいことを見つけろ」という話じゃない。俺がいま使っているのは、次の3つだけだ。
いま就活をやり直せるなら、こう選ぶ
① やりたいことを探さない。やりたくないことを削る
やりたいことを探すのは、無理だった。無いものは出てこない。
順番を逆にする。やりたくないことを削る。
俺の場合、一番上に来るのはこれだ。
「毎日会社に行きたくない」
身も蓋もないが、本音だ。そしてこれを1つ書くだけで、条件がはっきり決まる。
リモートができる仕事か、そうじゃないか。
物流の現場でリモートは絶対に無理だった。ドライバーの管理も、荷物の積み降ろしも、画面の前ではできない。
だから業界ごと変えるしかなかった。俺がITを選んだ理由の1つは、そこだ。やりたいことがあったわけじゃない。やりたくないことから逆算した。
続けて出すと、こうなる。
- 休みの日に電話がかかってくるのは嫌だ
- 休日に出かける体力も気力も残っていないのは嫌だ
2つ目は、働いている本人にしか分からないと思う。休みが取れているかどうかじゃなくて、休みの日に何かをする力が残っているかだ。
丸一日寝て終わる休日を何回か過ごすと、これは休みなのかと分からなくなってくる。
やりたいことは無くても、やりたくないことなら誰でも言える。しかも、やりたくないことの方が自分ではっきり分かっている。
② 残った中に、少しでも興味が湧く仕事内容があるか
削るだけだと消去法で終わる。もう一段だけ足す。
残った選択肢の中に、自分が少しでも興味が湧く仕事内容があるかを見る。
大好きじゃなくていい。「ちょっと面白そう」で十分だ。それが無い場所を選ぶと、しんどくなったときに踏ん張る理由が1つも残らない。
③ 業界を見る。ここが一番効いた
もし1つだけ選べと言われたら、これを選ぶ。
新卒のときは、年収なんてどこもだいたい横並びに見える。実際、同期と比べても大して変わらなかった。
でも5年もすれば大きく変わる。
個人の頑張りの話じゃない。業界全体でいくら払えるかが違うから、その中で頑張っても天井が違う。
俺は転職してみて、業界選びの重要性をことごとく感じた。
だからこう思っている。業界全体の年収が低いところは、よほどの信念がないとやめておいた方がいい。
その業界が好きで仕方ないなら止めない。でも「なんとなく」で入るなら、レンジの高い方を選んだ方がいい。
すでに入ってしまった人へ
ここまでは、まだ選べる人向けの話だった。
もう入ってしまって後悔している人の方が多いと思うので、そっちの話をする。
まずやった方がいいのは、自分がいまどう見られているかを数字で知ることだ。
後悔しているとき、頭の中にあるのは「この会社は良くない」という感覚だけで、比べる相手がいない。だから動けない。
診断の金額はやや高めに出る印象があるので、鵜呑みにはしない方がいい。それでも大きく開いているなら、いまの場所以外に正しく評価するところはあると考えていい。
後悔したら、すぐ辞めるべきか
結論から書く。「すぐ辞めろ」とは言わない。
短期離職は、正直なところ不利になると思う。俺自身が採用する側ではないので言い切れないが、転職活動をしていて、在籍期間は必ず見られていた。
辞める理由を、自分の言葉で説明できるか
分かれ目はここだと思っている。
「合わなかったので」だけだと、次の面接で必ず詰まる。何が合わなかったのか、次はどこを変えたいのかを説明できるなら、期間が短くても話は通る。
説明できないうちは、まだ辞め時じゃない。
次が決まってから辞める
これは強く言いたい。
お金が減っていく感覚は、思っている以上にきつい。
残高が減るのを見ながら転職活動をすると、判断がどんどん雑になる。早く決めたい、どこでもいいから決めたい、になっていく。
そして焦って入った会社は、うまくいった試しがない。
俺は自分の就活がまさにそれだったから、余計にそう思う。周りが始めたから始めて、なんとなく決めた。その結果がこの記事だ。
辞めたいと思ってから実際に動くまでの順番は、客先常駐をやめたい人へに書いた。俺は転職希望度30%くらいのときに登録して、9ヶ月かけて辞めている。焦らないための具体的な話だ。
ちなみに、3年いた
後悔していたのに、結局3年いた。
逃げ切れなかったわけじゃない。次に行くための準備に、それだけかかっただけだ。
その3年で何をやっていたかは物流総合職がきつい4つの理由に書いてある。ちゃんと結果も出していた。無駄な3年ではなかった。
動くと決めたら、1人で抱えない
初めての転職のとき、何から手をつければいいのか本当に分からなかった。
求人の見方も、職務経歴書の書き方も、自分がどの業界に行けるのかも分からない。
新卒のときと同じで、基準が無い状態で選ぼうとしていた。同じ失敗をもう一度やりかけていた。
自分のペースで求人を眺めたいだけなら、リクナビNEXTのような求人サイトに登録して見ているだけでも感覚はつかめる。俺も並行して使っていた。
入るときの年収をそのまま受け入れると、その後ずっと引きずる。この話は「客先常駐はやめとけ」は本当かに書いた。次の転職でも今の給与がベースになるので、入口の金額は思っているより重い。
まとめ
新卒で入った会社に後悔した。40℃のコンテナで30kgを降ろしながら、就職を間違えたと思っていた。
でも、後悔の正体は会社選びのミスじゃなかった。
選ぶ基準を、自分で持っていなかった。
人事は嘘をついていない。年間休日105日は、求人票にちゃんと書いてあった。俺はその数字の意味が分かっていなかっただけだ。
105日か125日かで、生活はまるで違う。世の中が休んでいる日に働くというのが、どういうことなのか想像できていなかった。
当時の俺に軸なんて無かったし、無くて当然だと思っていた。それでも軸は持って就活をした方がいいと言いたい。できなかった側だから言える。
やり直せるなら、こう選ぶ。
- やりたいことを探さない。やりたくないことを削る
- 残った中に、少しでも興味が湧く仕事内容があるか見る
- 業界を見る。新卒は横並びでも、5年で大きく変わる
とくに3つ目だ。適当に選ぶな。とくに業界は。業界全体の年収が低いところは、よほどの信念がないとやめておいた方がいい。
もう入ってしまって後悔しているなら、すぐ辞めなくていい。辞める理由を自分の言葉で説明できるようになってから、次を決めてから動く。
焦って決めた会社は、うまくいった試しがない。俺の就活がまさにそれだった。
同じ選び方を、もう一度しないことだ。