文系出身で、未経験でIT業界に転職した。
入って最初の半年、俺は本気でこう思っていた。
なんでこの業界に入っちゃったんだろう。
先に結論を書いておく。
失敗ではなかった。
ただ、そう思えるようになるまでに半年かかった。
そして、半年で消えた理由は技術が身についたからじゃない。
この記事は、その半年に何がしんどくて、何をしたら消えたのかを書いたものだ。
しんどかったのは、技術力じゃなかった
入る前から、技術で苦労するのは覚悟していた。
周りは全員、学生時代から4年やってきた人だった
周りは理系出身だ。
学生時代から4年プログラミングに触れてきて、業務でもシステムをやってきた人ばかりだった。
技術的なスキルが足りないのは、誰が見ても明らかだった。
きつかったのは、差があること自体じゃない。
遅れているのは分かるのに、何をすれば埋まるのかが分からないことだ。
参考書を1冊やれば追いつくのか。
手を動かせばいいのか。それとも4年分は4年かけないと無理なのか。
その見当がつかないまま、毎日「実力不足だな」と嘆いていた。
ただ、毎日削られたのは別のところだった
技術の差は、正直まだマシだった。
差があることは最初から分かっていたからだ。覚悟の範囲内ではある。
想定していなかったのは、もっと地味なことだった。
コードが書けないことは、正直そこまで問題にならなかった。
その話はプログラミングができないSEは辞めるべきかに別で書いてある。
毎日効いてきたのは、もっと地味なことだ。
先輩の説明が、一言も理解できない
分からないことがあるから、先輩や上司に聞く。
説明してもらう。
それでも全く理解できなかった。
むしろ聞いた後の方が「??」となることもしばしばあった。
分からない言葉が、3種類あった
あとから整理すると、こういうことだった。
業界としての前提知識なのか。
この会社だけで通じる固有名詞なのか。
それとも独特な省略語なのか。
先輩や上司は、そこを気にせず使ってくる。
当然だ。その人たちにとっては全部ただの日本語だから。
いちばん困ったのはここだ。
ググっても出てこない。
自分の知識不足で出てこないのか、社内独自の言葉だから出てこないのか、
それすら判断できない。
分からないことが多すぎて、当時はメモ用紙やノートに書ききれないくらい手を動かし続けていた。
書いても、その言葉の意味が分かるわけじゃない。
それでも書くしかなかった。
いま同じ状況なら、たぶんAIに聞いている
これは正直うらやましいと思っているのだが、今ならAIに聞ける。
当時の俺が詰まっていたのは、検索の入口に立てないことだった。
何という言葉なのかが分からないと、検索窓に打ち込むことすらできない。
AI相手なら、うろ覚えのまま投げられる。
「こういう文脈でこんな響きの言葉が出てきたんだけど」で、当たりがつく。
少なくとも「業界用語なのか社内用語なのか」の切り分けはできるはずだ。
そこさえ分かれば、社内用語なら諦めて聞けばいい。
当時これがあったら、あの半年はもう少し短かったと思う。
いま入る人は、そこは素直に使った方がいい。
仕事の進め方が、前職と根本から違った
これも効いた。
IT業界では、必ず根拠を残して仕事をする。
間違ったときに、責任の所在を問われるからだ。
だから「だろう」で仕事をするのはダメだと注意される。
とくにこの2つは、はっきり気をつけろと言われた。
- いつもこうだから
- ◯◯さんがこう言ったから
どちらも命取りだ、と。
理由を聞いて納得した。
システム構築は、1つのミスが多額の賠償金を請求されることに発展する。
だから根拠を持って発言する必要がある。
前職では、経験と勘で即断するのが仕事だった。
電話一本で話が進むし、「いつもこうだから」で通っていた。
その癖が抜けるまでに、しばらくかかった。
ノリが合わなかった。これは今も合っていない
技術でも進め方でもない話も書いておく。
職場のノリに、まったくついていけなかった。
社内で盛り上がる話題はだいたいこれだった。
- 野球
- ゲーム
- パチンコ
- 競馬
俺はサッカーとドラマと漫画だ。
話についていけないし、正直興味も湧かなかった。
しかも自分の話をする人が多い。
聞くのも結構大変だった(笑)。
ただ、これは致命傷にはならなかった。
聞き役に回ればいいと早めに割り切ったからだ。
「うんうん」と聞いていると、案外かわいがってもらえる。
趣味が合わないことと、仕事がやりやすいことは別だった。
ただし、雑談ができないと質問もしにくくなる
とはいえ、ノリの問題を軽く見てはいけないと思っている。
雑談が続かない相手には、用事のない話しかけ方ができない。
そうすると、質問のハードルまで上がる。
「これ何ですか」と聞くのは、実は雑談の延長線上にある。
普段まったく話していない人に、いきなり基本的すぎる質問をするのは重い。
だから、ノリが合わないことはそのまま言葉が分からない状態を延長させる。
この記事で書いている4つは、別々の問題に見えてつながっている。
俺の場合、聞き役に回ったことが結果的に質問のしやすさに効いた。
興味が湧かない話を「うんうん」と聞くのは、無駄な時間じゃなかった。
この4つ、放置すると全部「辞めたい」に着地する
ここまで4つ書いた。
技術が足りない。言葉が通じない。ノリが合わない。進め方が違う。
どれも単体では「まあ、そのうち慣れるだろう」で済ませたくなる話だ。
でも、放置するとどうなるかを並べると、けっこう怖い。
入口は4つだが、出口は1つしかない
技術が足りないのを放置すると、自信をなくしてやる気が落ちる。
成果が出ないから、そのまま転職を考え始める。
言葉が通じないのを放置すると、自己嫌悪して焦る。
不安なまま出社することになって、会社に行くのが辛くなる。
ノリが合わないのを放置すると、職場に馴染めないしつまらない。
人間関係が理由で辞めたくなる。
進め方が違うのを放置すると、怒られ続ける。
また怒られると思うと、確認するのも怖くなって動けなくなる。
気づいたと思うが、4つとも行き先が同じだ。
「この業界を選んだのが間違いだった」に着地する。
俺は4つとも片足を突っ込んだ。
だからこれは、他人事として書いていない。
最初の半年に感じた「失敗した」は、この4つが同時に来ていたからだと思う。
1つ1つは大したことがないのに、4つ重なると業界選びのミスに見えてくる。
半年で消えた。効いたのは社外じゃなく、職場の中だった
で、この後悔がいつ消えたか。
半年だ。
聞きやすい関係が、できていた
半年も経つと、先輩との関係性ができてくる。
そうすると気兼ねなく聞けるようになる。
そして、ここが大きかった。
わからないことを、わからないと言えるようになった。
最初の頃は言えなかった。
2回も3回も同じことを聞いたら呆れられるんじゃないか、と思っていた。
分かったふりのコストの方が、あとで高くつく
でも、分かったふりをして持ち帰ったところで、結局は分からないままだ。
そのまま手を動かすと、だいたい間違える。
間違えたものを直すには、もう一度説明してもらうところからやり直しになる。
つまり、あの場で「分かりません」と言うより相手の時間を余計に奪う。
関係を作った手段は、正直に言うと飲み会だった
じゃあ、その「気兼ねなく聞ける関係」をどうやって作ったのか。
身も蓋もないが、先輩や社内の飲み会に参加したからだと思っている。
今どき飲み会?と思う人もいると思う。
俺も、書いていて少し古い話だなとは感じる。
それでも書くのは、実際にそこで関係が変わったからだ。
理由ははっきりしている。
普段の仕事中に、業務以外の話をすることがほとんどないからだ。
席で交わすのは用件だけ。
その人がどういう人なのかを知る機会が、業務時間の中にはほとんど無い。
だから飲み会は、いまだに有効なんだと思い知らされた。
毎回行く必要はないと思う。
ただ、聞ける相手を1人作るための手段としては、いちばん手っ取り早かった。
いま振り返って、これに尽きると思っている。
わからないままにしないこと。
正直に書くと、劇的なことは何もしていない
ここは盛らずに書く。
社外に居場所を作ったわけじゃない。
勉強会に行ったわけでもないし、そういうつながりも当時は無かった。
話す相手は職場の人か、彼女くらいだった。
自己研鑽らしいこともやってはいた。
ただ、大したことじゃない。
- テスト工程をやるときは、テストの参考書を買った
- 要件定義をやるときは、要件定義の専門書を買った
- ブログを始めてみたり、Uberをやろうとしてバッグを買ったりもした
最後のやつはお金にならなかった(笑)。
やっていたのは、目の前の工程に必要な本を1冊買うくらいのことだ。
体系立てて勉強したわけでも、講座を取ったわけでもない。
だから「文系未経験だから人一倍努力しろ」みたいな話にはしたくない。
効いたのは努力の量じゃなくて、聞ける状態を作ったことだった。
1年後には、頼られる側になっていた
半年を過ぎてからは、坂を下るように楽になった。
1年も経つと後輩ができた。
教える側にまわると、自分がどれだけ分かっていなかったかも、逆に分かるようになる。
順にできる仕事の幅が広がって、裁量を持って進められるようになった。
進め方が分かってくると、問い合わせも一人で完結できる。
最初はあれだけ意味不明だった会話が、普通に成立するようになっていた。
もう1つ、地味だけど大きかったことがある。
転職で下がった生活水準にも、そのうち慣れた。
最初は落差がきついが、板についてくると気にならなくなる。
年収が下がる転職をどう受け止めたかは物流からの転職方法|物流→SE→ITコンサルで年収600万円に書いた。
この会社には結局4年いた。
最初の半年をあれだけ後悔していた割に、そのあとは居心地が良かった。
その4年をまるごと振り返った話は客先常駐SEは底辺なのかにある。
文系未経験でIT転職して「失敗した」と思っている人へ
いま同じところにいる人に向けて、順番だけ書いておく。
- いま何がしんどいのかを、技術と言葉に分ける。たいてい効いているのは言葉の方だ
- 分からない言葉を、業界用語か社内用語か省略語かで仕分ける。社内用語なら調べるだけ無駄で、聞くしかない
- 同じことを2回聞くのを、自分に許可する。分かったふりの方が高くつく
- まず職場の中に、聞ける相手を1人作る。社外のつながりは無くてもなんとかなった
- 判断は、半年たってからでいい。それでも消えないなら、そのときは環境の問題かもしれない
4がいちばん言いたいことだ。
世の中の記事は「社外にコミュニティを作れ」と書きがちだけど、
俺は作らなかったし、それで困らなかった。
必要だったのは、隣の席の先輩に気軽に聞けることだけだった。
まとめ:失敗じゃなく、まだ半年目なだけかもしれない
文系出身で未経験のままIT業界に入って、分かったのはこれだけだ。
- 覚悟していた技術の壁より、言葉が通じないことの方が毎日きつかった
- 分からない言葉は3種類あって、区別がつかないから検索もできなかった
- 後悔が消えたのは半年。技術ではなく、聞ける関係ができたから
- 社外のコミュニティは作っていない。必要だったのは隣の席だった
- 1年後には後輩ができて、頼られる側になっていた
「失敗した」と感じている人に伝えたいのは、
それが半年目の感想なら、まだ判断材料が足りないということだ。
俺はあの半年で辞めていたら、たぶん本当に失敗のまま終わっていた。
やることは1つでいい。
わからないままにしないこと。
未経験からIT業界に入るところの全体像は未経験からIT転職するロードマップ、
入った後に「辞めたい」と思ったときの順番は客先常駐をやめたいと思ったらに書いてある。