「固定残業40時間はやばい」
求人票やオファーにその数字を見つけて、検索した人が多いんだと思う。
先に、この記事でいちばん大事な数字を出しておく。
0回。
4年間で、俺が固定残業40時間を超えた回数だ。
超えなかっただけじゃない。超えそうになったことも、一度もない。
理由は単純だ。客先に合わせて働くと、実労働が7時間15分にしかならなかった。
自社の所定は8時間。つまり毎日45分、足りていなかった。
だから結論から言うと、こうなる。
固定残業40時間は、それ自体ではブラックの証拠にならなかった。
ただし、それは俺が偉かったからじゃない。そこも正直に書く。
結論:4年いて、一度も超えなかった
先に全部出す。
- 固定残業は40時間込み。手取りは20万で固定だった
- 4年間で40時間を超えた月はゼロ
- 客先に合わせると実労働が7時間15分。自社の所定8時間に毎日45分足りない
- それでも固定残業代は毎月満額もらっていた
- 残業したのは成果物の期限前と夕方の問い合わせ電話のときだけ
- 早く帰るための工夫はしていない。そもそも仕事量がそこまで無かった
入る前は怖かった。でも、実際はこうだった。
念のため先に答えておくと、「40時間ぶん働かされたか」の答えはノーだ。
固定残業には「その時間まで働かせていい」という意味はない。実際、うちの会社にそんな空気は一度も無かった。
検索している人がいちばん心配しているのは、たぶんそこだと思う。少なくとも俺の会社では起きなかった。
順番に書く。
先に断っておく。この記事に法律の話は出てこない
「固定残業40時間 やばい」で調べると、上位に出てくるのはほとんど弁護士事務所や人事向けメディアの解説記事だ。
違法になるケース、36協定、割増賃金の計算、最低賃金を下回るかどうか。
あれは、その道の人が書いたものを読んだ方がいい。俺は法律の専門家じゃないし、素人が薄くなぞっても意味がない。
この記事に書くのは、実際に40時間込みの会社で4年働いた人間の実感だけだ。
制度の説明は一切しない。そのぶん、条件は細かく出す。
検索してみて思ったのだが、「実際に40時間込みで働いた人が、どうだったか」を書いた記事がほとんど無い。
制度としてどうかは詳しく書いてあるのに、それで実際どうなるのかが分からない。だから検索している人は、たぶんまだ判断できていない。
そこだけを埋めるつもりで書く。
- IT企業(少人数のベンチャー気質)
- 客先常駐。4年間ずっと同じ客先だった
- 固定残業40時間込み。手取り20万で固定。ボーナスなし
- 4年働いて辞めた
つまり1社・1現場・4年分の話だ。
違法かどうかを知りたい人は、この記事では答えが出ない。先に専門サイトを見てほしい。
入る前は、俺も怖かった
念のため書いておくと、入社前から「固定残業40時間込み」だと分かっていた。
求人票にも書いてあったし、知らずに入ったわけじゃない。
そのとき思ったのは、これだ。
「固定残業40時間もついてるのはブラックかもしれない」
いま検索している人と、たぶん同じことを考えていた。
ただ、その感情は「損だ」でも「得だ」でもなかった。
「損とか得とかじゃなく、少し怖かった」
40時間ぶん働かされるのが前提の会社なんじゃないか。そういう漠然とした怖さだ。
計算すると、40時間は営業日20日で1日2時間だ。毎日2時間残って、ようやく元が取れる。
そう考えると、なかなかの数字に見える。
ただ、当時の俺は未経験から異業種に入るところだった。
実務経験もないし、コードも書けない。条件で会社を選べる立場ではなかった。
怖いと思いながら、それでも受けた。選択肢が他に無かったからだ。
だから、いま「40時間って多くないか」と迷える人は、俺よりだいぶマシな位置にいると思う。
いま思えば、比べる方法はあった。リクナビNEXTのような求人サイトで似た職種を並べれば、40時間が多いのか普通なのかは見当がつく。当時の俺はそれすらやっていない。
なぜ超えなかったのか。理由ははっきりしている
入ってみて、拍子抜けした。
理由は、時計が2つあったからだ。
客先の勤務時間は9時から17時15分。休憩1時間なので、実労働は7時間15分だ。
俺はそこに常駐していたので、その時間に合わせて働く。
一方、自社の所定は9時から18時。休憩1時間で、実労働8時間だった。
つまり、こういうことになる。
客先に合わせて働くと、自社の所定に毎日45分足りない。
営業日を20日として計算すると、月に15時間ぶん足りていない。
残業がどうこう以前の話だ。
残業が発生するどころか、所定労働時間にすら届いていなかった。
だから固定残業40時間を超えるわけがない。構造として、超えようがなかった。
「たまたま早く帰れた」という話ではない。そもそも足りていなかった。
それでも、固定残業代は満額もらっていた
ここも事実として書いておく。
所定に月15時間足りていなくても、固定残業40時間ぶんは毎月そのまま入っていた。
引かれたことは一度もない。
⚠️ これが制度としてどう評価されるのかは、俺には分からない。法律の話はしないと決めたので、判断は専門サイトに任せる。
ここで言えるのは、「固定残業=その時間まで働かされる」という前提が、少なくとも俺の場合は成り立たなかったということだけだ。
ただし、これは入る前の俺には分からなかったことだ。求人票には「固定残業40時間」としか書いていない。
補足しておくと、常駐先は時間がきっちりしている職場だった。だらだら残る文化が無い。
1日の流れも淡々としていた。9時に始業して、朝礼は無い。日報も毎日ではなく月末にまとめて出すだけだった。
つまり、時間を引き延ばす要素がどこにも無かった。
実際に早く帰れると分かったときの感想は、これだ。
「こんな短くていいの!?」
17時15分ちょうどに帰る日もあった。素直に嬉しかった。
前の職場では考えられなかったので、最初の数ヶ月は本当にこれでいいのかと落ち着かなかったくらいだ。
この構造は、客先常駐だと起きやすいかもしれない
あくまで推測だが、この「時計が2つある」状態は、客先常駐だと起きやすいんじゃないかと思っている。
常駐していると、働く時間は客先のリズムで決まる。客先が閉まれば、こちらも帰るしかない。
一方で、給与の計算は自社の規定でやる。この2つが一致しない。
俺の場合は、たまたま客先の方が早く終わる側だった。だから残業が発生しなかった。
逆だったら、逆のことが起きていたと思う。
客先常駐という働き方そのものについては客先常駐SEは底辺なのかに書いた。
残業したのは、2つの場面だけ
まったくゼロだったわけじゃない。残業した日はある。ただ、場面が決まっていた。
① 成果物の提出期限の1〜2日前
期限が迫っているときは、18時か19時くらいまでやった。
とはいえ、それも期限の1〜2日前だけだ。毎週あるわけじゃない。
② 17時ごろに問い合わせの電話が来たとき
帰る直前に問い合わせが来ると、その対応で少し延びる。
これも頻度としては多くない。
工夫して早く帰っていたわけじゃない
ここは正直に書いておきたい。
定時で切り上げるために意識してやっていたことは、何もない。
段取りが良かったわけでも、効率化していたわけでもない。
そこまで仕事量が無かった。それだけだ。
だからこの記事は「工夫すれば固定残業は超えない」という話にはならない。環境がそうだった、という話でしかない。
念のため書いておくと、残業したら損だとは思っていた。
固定残業込みなので、40時間まではいくら働いても給料が変わらない。働いた分だけ時給が下がる計算になる。
ただ、それを気にするほど忙しくなかった。
「でも仕事が忙しいのはたまに、だったので全然気にしていない」——これが4年間の実感だ。
損得を計算する前に、そもそも残業が発生しない。だから考える機会も無かった。
19時まで働いた日は「今日は頑張ったなあ」と思っていた
いま思うと、感覚がだいぶ狂っていた。
期限前に19時まで残った日、俺が思っていたのはこれだけだ。
「今日は頑張ったなあ」
19時だ。世の中の基準で言えば、たいして遅くない。
でも普段が17時15分なので、19時が「頑張った日」になる。
これは物流にいたころには絶対に無かった感覚だ。
前職では、残業は月20時間までしか申請できなかった。実働30時間でも20時間分しか付かない。その話は運行管理の仕事はきついに書いた。まったく別の世界だ。
同じ人間が、環境を変えるだけでこうなる。
この感覚のズレは、いま思うと少し怖い。
「19時まで働いた」を頑張ったと思えるのは、普段が17時15分だからだ。
もし普段が21時の職場にいたら、19時は「早く帰れた日」になる。同じ19時なのに、意味が逆になる。
固定残業が何時間かより、自分の「普通」がどこに設定されるかの方が、生活には効いてくると思う。
給料は低かった。でも、予算は立てやすかった
固定残業について、あまり見かけない話を1つ書いておく。
手取りは20万で固定だった。固定残業40時間ぶんが最初から入っているので、どれだけ働いても増えない。ボーナスもなかった。
金額としては、正直低い。
ただ、毎月の手取りが1円も動かないというのは、暮らすうえで悪いことばかりでもなかった。
いくら使えるかが、最初から決まっている。
残業代で毎月変わる給料だと、今月いくら入るのかが月末まで読めない。そこを考えなくて済んだ。
毎月の入金額が同じなので、家賃を払って、光熱費を引いて、残りがいくらか。それが4年間ずっと同じだった。
計算し直す必要がない。一度決めたら、そのまま回せる。
もちろん、金額そのものが上がるわけじゃない。低い水準で読みやすい、というだけだ。
胸を張って言えることでもない。ただ、固定残業の話が「デメリットしかない」ように書かれがちなので、実際に4年いた側として、ここだけは付け加えておきたかった。
実際、生活はかなり削っていた。車を手放したし、外食もしなくなった。そのあたりは客先常駐SEは底辺なのかに書いてある。
ここまで書いて何だが、これは運だ
大事なところなので、はっきり書く。
俺が超えなかったのは、客先の定時が17時15分だったからだ。
もし客先が20時まで動いている現場だったら、俺も20時まで働いていたと思う。
その場合、固定残業40時間はあっという間に埋まる。
同じ「固定残業40時間」でも、配属先が変わるだけで意味がまるで違う。
だからこの記事を「固定残業40時間は大丈夫」という話として読まないでほしい。
俺の場合は大丈夫だった。それだけだ。
しかも俺は、自分で調べてその環境を選んだわけじゃない。
入る前に「客先の終業は何時ですか」なんて聞いていない。そもそも、そこが効いてくるという発想が無かった。
入ってみたら、たまたまそうだった。完全に運だ。
だから、これから受ける人には俺がやらなかったことをやってほしいと思っている。聞けば分かることは、聞いた方がいい。
ちなみに1回目の転職も2回目も、俺が相談の本体として使ったのはリクルートエージェントだった。求人票に書いていない部分は、自分で企業に聞くより間に入ってもらう方が早い。
ちなみに、客先が変わるリスクについては俺は経験していない。4年間ずっと同じ客先だったからだ。その話も「客先常駐はやめとけ」は本当かに書いた。
いまの会社は固定残業30時間。やはり超えていない
参考までに、いまの会社のことも書いておく。
固定残業は30時間。定時は9時から17時30分だ。
営業日を20日として計算すると、毎日19時まで働けば超えるくらいの水準になる。
いまのところ超えそうになったことはない。19時を超える日がないからだ。
40時間から30時間に減ったから楽になった、という話ではないと思っている。
結局のところ、効いているのは「定時が何時か」と「その職場が実際に何時まで動いているか」だ。
見るべきは、時間数じゃない
最後に、いま求人票を見て迷っている人へ書いておく。
固定残業40時間について、俺がいま思っていることはこれだ。
「気にしなくていい。でもブラックの見極めの条件にはある」
40時間という数字だけで、その会社がやばいかどうかは決まらない。俺は現に一度も超えていない。
一方で、数字が大きいこと自体は、見極める材料の1つではある。そこは否定しない。
じゃあ何を見ればいいのか。
この4つのうち、俺がいちばん効くと思っているのは1つ目だ。
その職場の人が、実際に何時ごろ帰っているのか。
固定残業が何時間だろうと、みんなが18時に帰る職場なら超えない。逆に、みんなが21時まで残る職場なら、20時間でも足りない。
そして客先常駐を受けるなら、2つ目も同じくらい効く。自分の勤務時間は、自社ではなく客先のリズムで決まるからだ。
3つ目と4つ目は、制度としてまともかどうかの確認だ。ここは弁護士サイトの方が詳しいので、そちらで裏を取ってほしい。
求人票に書いてあるのは時間数だけだ。
実際に何時に帰れるかは、書いていない。そこは会社の雰囲気とか、面接のときに見るしかない。
面接で何を聞くかについては「客先常駐はやめとけ」は本当かにまとめてある。
そして、これがいちばん言いたいことだ。
見るべきは時間数じゃなく、実際に何時に帰れる職場かどうかだ。
40時間でも17時15分に帰れる会社があるし、20時間でも21時まで帰れない会社はあると思う。
数字は同じでも、中身がまるで違う。
俺は「40時間」を見て怖くなり、それでも入って、結果4年間一度も超えなかった。
あのとき怖がっていたのは、数字であって、実態ではなかった。
もちろん逆のパターンもある。数字が小さくて安心して入ったのに、実態は毎日遅い、ということもあるはずだ。
どちらにしても、求人票の数字だけでは分からない。そこだけは、4年やってはっきりした。
未経験でIT業界に入ってからのことは客先常駐をやめたいと思ったらとプログラミングができないSEは辞めるべきかにも書いた。