「ボーナスなし きつい」
そう調べているということは、求人票の「賞与なし」か「年俸制」の文字で手が止まったか、いま実際にボーナスの出ない会社で働いているかのどちらかだと思う。
俺は年俸制でボーナスの出ない会社に4年いた。
先に、この記事でいちばん大事な数字を1つ出しておく。
5万。
その4年間、俺が銀行口座に置いていた現金だ。
これだけ見ると、かなり危ない感じがすると思う。
でも困っていたからじゃない。
5万だけ残して、余った分を毎月そのまま積立に回していたからだ。
ボーナスが無い前提で組むと、家計はこうなる。
そして4年やって出た結論が、これだ。
ボーナスが無いことは、俺が会社を辞める理由にならなかった。
順番に書く。
先に言っておく。ボーナスなしは、辞める理由にならなかった
結論から書く。
4年間、夏も冬も1円ももらっていない。
それでもボーナスが無いからという理由で転職はしていない。
もっと言うと、いまでもこう思っている。
「なくて良かったかも」
強がりではない。理由はちゃんとあって、それは記事の後半に書く。
ただしこれは「ボーナスなんて要らない」という話じゃない。
実際、俺は横でボーナスの話を聞くたびに普通に羨ましかった。そこも隠さずに書く。
条件を、先に全部出しておく
金の話は前提が違うと何の参考にもならないので、先に出す。
- 年俸制。求人票に「ボーナスなし」と書いてあった
- 12分割。賞与月に上乗せされるタイプではない
- 手取り20万。固定残業40時間ぶんが最初から入っていて、どれだけ働いても増えない
- 家賃7万。家賃補助は無い
- 4年いた
年俸制には、年俸を12で割るタイプと、14や16で割って賞与月に多く払うタイプがある。
俺のところは12分割だった。だから毎月きっかり同じ額が入る。
図にすると分かりやすいが、年収の総額が同じなら、違うのは「いつ入るか」だけだ。
固定残業40時間ぶんが入っていた話は、それだけで1本になったので固定残業40時間はやばい?に書いた。
「年俸制」と書いてあっても、中身は同じじゃない
ここは入る前に知っておいた方がいい。
求人票の「年俸制」は、年間の総額が決まっているという意味でしかない。
その総額をどう割るかは会社によって違う。
- 12分割:毎月おなじ額。賞与という形では出ない(俺のところ)
- 14分割・16分割:毎月を低くして、夏と冬に2〜4ヶ月ぶんを乗せる
後者は求人票に「賞与あり」と書かれることもあるが、年俸の中から出ているだけで、総額は最初から決まっている。
つまり同じ「年俸400万」でも、毎月の手取りがまったく違う。
ここは求人票の文字だけだと分からないことがある。
俺は当時それを知らずに入っていて、たまたま12分割だった。運が良かっただけだ。
求人票で「賞与なし」を見たとき、俺は何も思わなかった
ここは正直に書く。
求人票に「年俸制。ボーナスなし」と書いてあるのを見て、俺が思ったことはこれだけだ。
「別に気にしていない」
賢い判断をしたわけじゃない。
年間でいくら損するのかを、計算したことすら一度もない。
いま書きながら思うが、たぶん本来はそこを計算してから決めるべきだった。
ただ、当時の俺は未経験でIT業界に入ろうとしていて、頭にあったのは受かるかどうかの方だった。
このとき求人を見ていたのはリクナビNEXTだった。未経験で応募できるところを、人と話さずに自分のペースで探していた時期だ。
賞与の有無は、条件表の中の1行として通り過ぎていった。
きつかったのは、横で聞こえるボーナスの話だった
入ってから4年、ボーナスで「きつい」と感じた場面は、実は金額の話じゃなかった。
俺は4年間、同じ客先に常駐していた。
常駐先の社員には、ボーナスの話をしている人がいた。
同じ場所で、同じ時間に働いている。席も並んでいる。
でも夏と冬に、片方にだけ何かが入る。
正直に書くと、その人たちが何を話していたかは覚えていない。
金額の話だったのか、何に使うかの話だったのか、それとも少なくて愚痴っていたのかも分からない。
「ボーナス」という単語が耳に入る、それだけで十分だった。
そのとき俺が思っていたことを、そのまま書く。
「ボーナスあるんだ。いいなあ。羨ましい」
これ以上でも以下でもない。
腹が立ったわけでも、卑屈になったわけでもなかった。ただ普通に羨ましかった。
ちなみに自社のメンバーは全員ボーナスなしだった。同じ会社の人間は全員同じ条件だったので、社内で比べる相手はいない。
社外にもいなかった。大学の同期や友人とはその頃すっかり疎遠で、ボーナスの話をすることもなかった。
だから俺にとって「ボーナスがある人」は、統計でも世間でもなく、隣の席の人ひとりだけだった。
比べる相手は、いつも隣の席にいる別の会社の人だった。
これは地味に効く。
社内に自分より条件のいい人がいるなら、「頑張れば自分もそこに行ける」という話にできる。
でも隣の席の人は、そもそも入っている会社が違う。
どれだけ成果を出しても、その人の側には移れない。差が縮まる道が最初から無い。
で、ここが今回いちばん言いたいところなんだが、羨ましいと思う理由は「金額」じゃなかった。
俺は自分の年収がいくらかは知っている。相手の年収は知らない。
つまり比べていたのは総額じゃなくて、「夏と冬に何かが起きるかどうか」だけだった。
これはかなり雑な比べ方だ。
そして求人票を見ている人も、たぶん同じ比べ方をしている。
いま転職する気がなくても、間に人を入れて聞いておくと物差しができます。賞与ありの求人と並べるとき、そこが無いと判断のしようがありません。聞くだけ聞いて閉じても大丈夫です。
俺がこの4年をどう感じていたかの全体は客先常駐SEは底辺なのかにまとめてある。
4年間、どうやって回していたか
ここがいちばん知りたいところだと思うので、そのまま出す。
手取りは20万。ここから毎月3万を積立に回して、残りの17万で暮らしていた。
17万のうち7万が家賃なので、実際に使えるのは10万だ。
積立3万の中身は、手取りの10%にあたる2万の投信積立と、イデコの5,000円。残りは個別株に入れていた。
⚠️ 先に書いておくと、これは「こうしろ」という話じゃない。俺がそうしていたというだけの記録だ。
口座には現金を5万しか置いていなかった
そして冒頭の数字に戻る。
銀行口座に置いていた現金は5万だけだった。
4年間ずっとだ。
これを人に言うと不安じゃないのかと聞かれるが、当時の感覚はこうだった。
「平気。別に超えるような生活をしていない」
毎月17万に収まるように暮らしていて、実際に収まっていた。だから5万を割ることが無い。
割らないから、不安になる場面が来ない。
「特別費」と言えるほど、ちゃんとしていない
ここは盛りたくないので正直に書く。
高い買い物をするときは、毎月ためている分から出していた。よく家計の話で言う「特別費」にあたるものだ。
ただ、そこまで計算していない。
毎月いくらを特別費に積む、みたいな設計はしていなかった。やっていたのは1つだけだ。
5万を割らないように、毎月の手取りの範囲で調整する。
家計簿をつけていたわけでもない。家計管理がうまかったのではなく、上限が動かないから収まっていただけだ。
4年で貯まったのは、年間40万くらいのペースだった。3万×12で36万、そこに少し足した程度だ。
⚠️ 前に「貯金できていない」と書いたことについて
別の記事で、俺はこの時期のことを「貯金もほとんどできていない」と書いている。
矛盾しているように見えると思うので、ここで揃えておく。
どちらも本当だ。
口座の現金は4年間ずっと5万のままだった。だから通帳を見る限り、金は1円も増えていない。
増えていたのは積立の方で、しかもそれはすぐ使える金じゃない。
「貯金がある」という実感は、4年間まったく無かった。
数字の上では年間40万積み上がっているのに、生活の感覚としては何も増えていない。この2つは同時に成り立つ。
家賃を引いた10万で、何をしていたか
生活費17万のうち7万が家賃なので、残りは10万だ。
この10万で暮らすために消えたものは、はっきりしている。
- 車を手放した
- 外食をほとんどしなくなった
- 服も靴も買わなくなった
物が減っていく一方で、増えることはなかった。
この生活の縮み方そのものは客先常駐SEは底辺なのかが本体なので、そちらに詳しく書いている。
ここで言いたいのは1つだけだ。
ボーナスが無くても回っていたのは、俺が我慢強かったからじゃない。生活の方を先に縮めていたからだ。
このころの生活水準そのもの(車を手放した、外食をしなくなった)は客先常駐SEは底辺なのかに書いている。
痛かったのは、高い買い物をするとき
で、困らなかったかというと、そうでもない。
ボーナスが無い家計で高い買い物をすると、その月から出すしかない。
ボーナスがある人なら「夏に買おう」と先送りできるところが、こっちには先がない。
実際に困ったことはなかった。普段ためていたからだ。
ただ、気持ち的には痛い。
そのとき頭に浮かぶ言葉は、毎回これだった。
「今月節約しなきゃ」
落ち込むとか、惨めになるとかではない。その月の調整の話になるだけだ。
ここが、ボーナスありの家計といちばん違うところだと思う。
- ボーナスあり:大きい出費を年2回の山まで先送りできる
- ボーナスなし:先送りできない。その月で吸収する
金額の問題ではなく、タイミングの逃げ場があるかどうかの差だった。
「賞与なしは損なのか」は、年収の総額と毎月の手取りを並べれば自分で判断できます。俺は入るときにそれをやらなかったので、4年間ずっと雰囲気で比べていました。人と話す時間が取れなくても、求人を眺めるだけで比較はできます。
それでも「無くてよかったかも」と思っている
ここが、この記事でいちばん書きたいところだ。
4年やって、俺はこう思うようになった。
「ボーナス有りだとお金使ってもいいやって気持ちになるから、なくて良かったかも。その分毎月の貰える額減るし」
言っていることは2つある。
① 入ってくる予定があると、先に使ってしまう
夏と冬に大きい額が入る予定があると、その前から気が大きくなる。
「ボーナスで払えばいいや」で買う。分割で買う。
俺にはその逃げ道が最初から無かった。
使えるのは、その月に入った分だけ。
だから毎月の中で収めるしかなかったし、収めれば必ず残った。
② 賞与がある分、毎月は低くなっている
もう1つはもっと単純な話だ。
年収が同じなら、賞与に回した分だけ毎月の額は減る。
12分割は、その減った分が毎月に戻ってきているだけとも言える。
毎月の家賃も食費も、夏と冬にまとめて払うわけじゃない。出ていく方は毎月なのに、入る方だけ年2回に寄せる必要が本当にあるのか、というのが4年やった実感だ。
ちなみに俺は、このあと転職して年収を上げている。そのときも判断材料にしたのは賞与の有無ではなく総額だった。その話は転職2回で年収を戻すまでにやったことにまとめてある。
1回目(未経験)も2回目も、相談の本体として使ったのはリクルートエージェントだった。
ボーナスがある方が安定、とは限らない
もう1つ、これは実際に見たことなので書いておく。
賞与の制度があることと、賞与が出ることは同じじゃない。
前に働いていた会社には、賞与の制度があった。求人票にも書いてあった。
でもコロナ禍のとき、部署によっては出なかった。
制度としては存在している。ただ業績次第で消える。
つまりこういうことになる。
- 年俸制12分割:金額が動かない。増えないが、減りもしない
- 賞与あり:良ければ増える。悪ければ0になることがある
どちらが良いかは人によると思う。
ただ「賞与あり=安定」ではないのは確かだ。むしろ年俸制の方が読めるとすら思っている。
この4年で年収が実際どう動いたかは「客先常駐はやめとけ」は本当かに数字で書いた。
気にしていたのは、俺じゃなくて周りだった
4年経って転職するとき、親にその話をした。
返ってきた最初の質問が、これだった。
「ボーナスあるのか?」
年収がいくらになるかでも、何をする会社かでもなかった。
ボーナスの有無だった。
このとき初めて気づいたことがある。
4年間、ボーナスが無いことを気にしていたのは、俺じゃなかった。
自分では条件表の1行としてしか見ていなかったものが、人にとっては会社の良し悪しを決める指標だった。
親の世代からすると、ボーナスが無いというのはあまり良い響きではないんだと思う。
もしくは、単に古い考え方なのかもしれない。
そこは俺にも分からない。断定できるほど親の世代のことを知らない。
ただ、いま「ボーナスなし きつい」で検索している人の何割かは、自分がきついんじゃなくて、周りにどう見られるかが引っかかっているんじゃないかと思う。
俺はそうだった。
ここを分けて考えると、だいぶ楽になる。
- 生活が回るか:毎月の手取りと家賃で決まる。賞与の有無はほぼ関係ない
- 周りにどう見えるか:ここだけ「賞与なし」が効いてくる
前者は数字で確かめられる。後者は、確かめようがない。
そして検索して不安になっているときは、たいてい後者の方だ。
俺は親にそう言われても転職をやめなかったし、いま振り返っても判断は間違っていなかったと思う。
ただ、あの一言を思い出せるくらいには引っかかっている。
じゃあ「賞与なし」の求人は避けるべきか
答えを書く。
「年俸制・ボーナスなし=やめとけ」ではない。
4年いた人間としては、避ける理由にはならないと思っている。
そのうえで、見た方がいいところを並べる。
- 年収の総額(賞与ありの会社と、必ず総額で並べる)
- 毎月いくら手元に残るか(賞与に寄せている会社は、毎月が低い)
- 12分割か、賞与月に上乗せか(同じ「年俸制」でも別物)
- 固定残業が入っているか(入っていると、手取りは動かない)
この4つは賞与の有無より、生活に効く。
あと、これは転職活動をしていて思ったことだが、年俸制の会社は最近まあまあ見かける。
「賞与なし」で候補から外していくと、単純に選択肢が減る。
いまの会社には制度がある。ただし、まだもらっていない
最後に、いまの話も書いておく。
転職した先には賞与の制度がある。求人票に書いてあったので、入る前から知っていた。
今年もらえるらしい。
ただ、まだもらっていない。
だから「ボーナスがあるとこう変わる」という話は、俺にはまだ書けない。
書けるのは、ここまでだ。
4年間ボーナスをもらわずに働いて、それを理由に辞めなかったし、生活も回っていた。
そして辞めるとき、それを気にしたのは俺ではなく周りだった。
無料の診断で数字が出るので、賞与ありの会社と並べるときの物差しになります。数字が出るところまでで終えて大丈夫です。
固定残業が入っている求人の見方は固定残業40時間はやばい?に、この4年の中身そのものは「客先常駐はやめとけ」は本当かに書いてある。