「年間休日105日はやめとけ」
内定が出た会社の求人票にその数字を見つけて、検索した人が多いんだと思う。
俺は年間休日105日の会社で3年働いて、辞めた。
先に、いちばん言いたいことを書く。
105日がきつかったのは、休みの日数そのものじゃない。
休みが、自分のものじゃなかったからだ。
意味が分からないと思うので、順番に書く。
先に言っておくと、この記事は「105日はブラックだからすぐ辞めろ」という話ではない。
俺の会社は、記録の上では何ひとつ間違っていなかった。連勤が何十日も続いたわけでもない。
それでも3年で辞めた。その理由を、できるだけ正確に書く。
先に、この記事で言えることの範囲を出しておく
「年間休日105日」で検索する人の勤め先は、製造かもしれないし、小売かもしれないし、飲食かもしれない。
俺が書けるのは、そのうちの1つだけだ。
- 物流会社の営業所にいた
- 職種は配車(運行管理)
- 3年働いて辞めた
- 辞めた先は年間休日125日。この差は自分で経験している
つまり1社・1現場・3年分の話だ。105日の会社を全部語れる立場ではない。
逆に言うと、ここに当てはまらないことは書かない。
先に言っておく。求人票の105日は正しかった
こういう記事は「求人票に騙された」で始めると気持ちがいい。でも俺の場合は違った。
求人票に書いてあった105日は、そのとおりだった。
全社共通で105日だったし、俺自身の稼働日カレンダーもちゃんと105日で設定されていた。ごまかされてはいない。
じゃあ何がずれていたのか。数字ではなく、営業所の運用の方だ。
会社は24時間365日動いている。倉庫には荷物が入ってくるし、出ていく。誰かが必ず出る必要がある。
そして「誰が出るのか」は、職種によって全然違った。
倉庫作業員とドライバーはシフト制だった。月曜から金曜はみんな出て、土曜に出る人と日曜に出る人で分かれる。夜勤の人もいた。
事務職と総合職は月曜から土曜。
そして俺のような配車担当は、そこにもう少し足される。ここは後で書く。
求人票の「年間休日105日」から、この差は読み取れない。同じ数字の裏で、まったく違う働き方が動いている。
倉庫側が実際どうだったかは物流倉庫がきつい5つの理由に書いた。俺も最初の数ヶ月はそっちにいた。
105日の正体は、土曜だった
結論から言うと、きつさのほとんどはここに集まっていた。
まず前提から。年間休日105日というのは、週休2日の計算だ。
52週で104日。そこに少し足して105日になる。つまり土曜も、休みとして日数に入っている。
ここまでは普通の話に聞こえると思う。俺も入る前はそう思っていた。
実際に働いてみると、土曜には2種類あった。
- 稼働日カレンダー上、はじめから「出社日」に指定されている土曜
- カレンダー上は休みになっている土曜
前者は、制度としてそう決まっている。105日に収めるための調整だ。出るのが当たり前なので、これは文句のつけようがない。
問題は後者だった。
カレンダー上は休みなのに、実際はほとんど出社が決まっていた。
荷物は土曜も動く。ドライバーは走っている。誰かが指示を出さないと現場が止まる。だから出る。
出社日に指定された土曜で削られ、休みのはずの土曜でも出る。この二重で、土曜はほとんど残らなかった。
中身も書いておく。半日ではない。平日とまったく同じ時間で、終日だ。
ただし残業はなかった。定時で上がれる。そこは平日より楽だった。
だから「土曜がつぶれる」というより、土曜がもう1日の平日になるという感覚に近い。週の頭から数えて6日目の平日が来る。
休むには、こちらから言い出さないといけない
ここがいちばんしんどかった。
土曜に休みたいなら、自分から「休みます」と言わないといけない。言わなければ、出社する前提で話が進む。
しかもそれだけじゃない。
上司の都合を確認しないと、休めるかどうか分からない。
自分が休みたい日に、上司も休みたいかもしれない。誰かが出ないと回らないので、そこで調整が要る。
念のため書いておくと、まったく休めなかったわけじゃない。月に1回は土曜に休んでいた。
言えば休めた。休ませてもらえた。その日は普通に出かけていた。
でも「言えば休める」と「休みである」は違う。
つまり、休みが「もらうもの」になっているということだ。
制度上は休みなのに、取るために毎回お伺いを立てる。これが3年続く。
言い方を変えると、カレンダーの上では休みが105日あるのに、自分の意思で決められる休みはもっと少ない。
同じ職場でも、立場で全然違った
これが分かりやすい話だと思う。
同僚は、土曜を休んでいなかった。俺と同じで、出るのが前提になっていた。
ところが後輩は基本的に休みだった。
後輩が出るのは、稼働カレンダー上そもそも出社日になっている日と、経理が忙しくなる月末くらい。それ以外は普通に土日で休んでいる。
同じ会社、同じ営業所、同じ年間休日105日だ。
それでも、立場によって土曜の意味がまったく違う。
制度が休みを決めているんじゃない。その日に誰が回すかで決まっている。だから自分の番になったら、それは休みじゃなくなる。
三連休は、三連休にならない
世の中が土日月の三連休のとき、俺のところはこうなる。
- 土曜:通常どおり出社。配送のドライバーが動いているので、指示を出す人間が要る
- 日曜:休み
- 月曜:配車を組みに会社へ行く
三連休の真ん中の1日だけが休み、という形になる。
SNSを開くと、みんな出かけている。こっちは月曜の夕方に会社にいる。
休みの日も、携帯は鳴る
もう1つ、これを書かないと「休みが自分のものじゃない」の意味が伝わらない。
休みの日でも、携帯が鳴る。
「あの荷物、倉庫のどこにあるか知ってる?」
「ちょっと先方に連絡取ってくれや」
自分しか把握していないことがあるから、鳴る。悪気があって鳴らしているわけじゃない。
ただ、1本鳴った時点で、その日は休みじゃなくなる。
実際に取られる時間は5分かもしれない。でも問題はそこじゃない。
鳴るかもしれない、と思いながら過ごす1日は、休んでいることにならない。
遠出しない。酒を飲まない。携帯を手元から離さない。日曜が「待機の日」になっていく。
年間休日105日というのは、あくまで会社に行かない日が105日という意味でしかない。仕事から離れられる日が105日ある、という意味ではなかった。
長期休みは、有休を使って作るものだった
GW、お盆、シルバーウィーク、年末年始。
世間が長く休むこの4つが、いちばん分かりやすかった。
会社としては休みなのだ。ただ、稼働日カレンダー上は出勤の日として登録されている。
だから休むと、有休を使った扱いになる。
年に5日は有休を取ることが義務になっているが、その5日がここで消えていく。自分で使い道を決めた記憶がない。
3年間で、いちばん長かった休みは4日だ。
4日あれば帰省はできた。実際そうしていた。寝て終わったわけじゃない。
ただ、それが1年でいちばん長い休みだったという話でもある。
この期間も、ドライバーと倉庫作業員はシフトで出ていた。事務は休みだった。
配車だけ、連休の最終日の夕方に出る
さっき「配車はもう少し足される」と書いたのがこれだ。
連休が明ける前に、翌日の配車を組んでおかないといけない。だから最終日の夕方に会社へ行く。
祝日も同じだった。祝日の夕方は配車をやる必要があるので、数時間だけ出社する。
⚠️ これは配車担当だけの話だ。同じ会社の事務職にはこれがない。職種でここまで変わる。
数時間だから大したことないだろう、と思うかもしれない。俺もそう思っていた。
でも「夕方に会社へ行く」という予定が1つあるだけで、その日は丸ごと休みじゃなくなる。遠出はできないし、朝から気持ちが仕事側に寄っている。
配車という仕事の1日の流れそのものは運行管理の仕事がきつい5つの理由に書いた。電話が何本鳴るかまで残してある。
記録の上では、全部きちんとしていた
ここまで書いてきて、自分でも思うことがある。
この会社、記録の上では何も間違っていない。
年間休日は105日と書いてあって、実際に105日で設定されている。
土曜は休みとして登録されている。長期休みも制度としては存在する。
似た形が、残業時間の方にもあった。
⚠️ ここは休日出勤とは別の話だ。混ぜると分かりにくくなるので分けて書く。
月20時間を超える残業の申請は、社内的にNGとされていた。だから実際に30時間働いても、付くのは20時間分になる。
数字の上では、誰も20時間を超えて働いていないことになる。
上司はタイムカードを切ってから、そのまま仕事を続けていた。
休日の方も、残業の方も、記録だけ見れば正しい。正しいまま、実態がずれていく。
これが、この会社の形だった。誰かが悪意で嘘をついているわけじゃない。そういう回り方になっているだけだ。
残業の方の話は運行管理の仕事がきつい5つの理由に詳しく書いた。1日の流れと、どこで時間が溶けるかまで残してある。
自分が異常だと気づいたのは、友達と遊んだ日だった
3年のあいだ、ずっと不満だったわけじゃない。
最初のうちは「社会人ってこんなものだろう」と思っていた。周りも同じように出社していたし、比べる相手がいなかった。
変わったのは、久しぶりに地元の友達と遊ぶ機会があったときだ。
その友達は、普通にカレンダーどおりの休みだった。
土日が休みで、祝日も休みで、連休は連休として休んでいる。
別に自慢されたわけでも、比べられたわけでもない。ただ普通に予定を合わせただけだ。
でもそのとき、はっきり分かった。
異常なのは俺の方だった。
そこから急に、土曜の出社がほぼ決まっていることも、休みが少ないことも、全部が不満に変わった。
それまで我慢できていたのは、たぶん気づいていなかっただけだ。
「いつまで続けるのか、こんな生活」
そう思い返す日が、増えていった。
週1と週2は、1日ぶんの差じゃない
先に事実だけ置いておく。日曜は必ず休みだった。月に4日は休んでいる。連勤も最長で6日だ。
つまり「まったく休めない会社」ではなかった。週に1日は、ちゃんと休んでいる。
それでも足りなかった。理由は、辞めてから分かった。
年間休日125日の会社に移った。
日数でいえば20日増えただけだ。月にすると1.7日くらい。大した差に見えない。
でも、生活はまるで変わった。
理由がはっきりしている。
休みが1日だと、寝て終わる。
疲れを抜くだけでその日が消える。夕方になると「明日も会社に行かなきゃいけないから、もう寝よう」と思う。そして次の週が始まる。
休みが2日あると、1日を回復に使っても、もう1日残っている。
この「もう1日ある」が、想像していたよりずっと大きかった。
いま実際に変わったこと
自分でも意外だったものを並べる。
- 「明日も会社だから寝よう」という感覚がなくなった
- 疲れが残っている感覚がない。月曜の朝に前の週を引きずらない
- 寝て1日使っても、もう1日ある。この余白が心のゆとりになる
- 自分のやりたいことに時間を使える
- 電話が鳴らない
最後のは休日数と直接は関係ないが、俺にとっては同じ話だった。休みの日に携帯が鳴らないというだけで、休みが休みになる。
⚠️ ただし正直に書いておくと、この転職で年収は下がっている。休みと引き換えに減った。
その金額の話と、下げてよかったのかどうかは物流総合職がきつい4つの理由に書いた。
いま105日の会社にいるなら、先に数字を1つ持っておく
辞めろ、とは言わない。
ただ、俺が3年動けなかった理由ははっきりしている。比べる相手がいなかったからだ。
休みが少ないのは分かっていた。でも「じゃあ自分は他でやっていけるのか」が分からないので、動きようがなかった。
診断で出る金額はやや高めに出る印象があるので、そのまま信じない方がいい。それでも今の会社の評価が全てではないと分かるだけで、見え方は変わる。
これから入る人へ|日数より先に聞くこと
内定が出ていて、105日という数字に引っかかって調べている人向けに書く。
105日そのものは、確認しなくていい。求人票に書いてあるし、その数字は正しい。俺の会社も正しかった。
聞くべきなのは、その中身の方だ。
とくに1つ目が大きい。
105日は週休2日の計算なので、土曜は日数に入っている。そこは会社に聞くまでもない。
聞くべきなのは、そのうち何日がカレンダー上の「出社日」に振られているかだ。ここで実際に休める土曜の数が決まる。
そして、休みとして数えられている土曜が、本当に休めているのか。俺のところは、ここが機能していなかった。
だから聞き方はこうなる。「土曜に休みたいとき、どういう手順になりますか」
自分で決められるのか、誰かの都合を確認するのか。ここで実態が出る。
会社の選び方そのものを間違えた話は新卒入社で後悔した4つの理由に書いた。俺は数字を見ていたのに、意味を想像できていなかった。
休みが少ない中で、どうやって転職活動をしたか
ここは自分でも書いておきたい。
土曜がほぼ潰れる状態で、どうやって面接を受けたのか。
土曜に面接をやりたがる会社は、受けなかった
これは最初に決めた。
土曜に面接できる会社は、やばいと思った。だからそもそも候補に入れなかった。
こちらは土曜が休めないから困っているのに、その土曜に呼び出してくる会社に行ったら、同じことの繰り返しになる。
面接の日程の入れ方に、その会社の休みの扱い方が出る。選考を受けながら、こっちも見ていた。
平日の夜に入れた
じゃあいつやったのかというと、平日の夜だ。
定時で上がれば19時から始められる。だから19時開始にできる会社を選んで進めた。
ここは運も大きかった。IT業界を狙っていたことと、コロナ禍のタイミングが重なって、リモート面接ができるようになっていた。
移動時間がゼロになるので、定時で上がってそのまま受けられる。これがなかったら、たぶん物理的に無理だった。
誰でも同じ条件になるとは限らない。ただ、いまはリモートで受けられる会社を優先して選ぶという手は普通に取れると思う。
最終面接だけは、どうにもならなかった
それでも全部が夜で済んだわけじゃない。
最終面接は対面のところがあった。昼間に行くしかない。
そこは休みをもらった。
正直に書くと、当日に「体調不良です」と嘘をついて休んだこともある。
褒められた話じゃない。勧めるつもりもない。
ただ、休みが自分で決められない職場にいると、こうなるというのは書いておきたかった。有休を普通に申請して普通に取れるなら、嘘をつく必要はない。
休みを増やす転職は、条件で探せる
年収を上げる転職より、休みを増やす転職の方が、条件がはっきりしていると思っている。
年間休日は求人票に必ず書いてある。125日以上で絞れば、それだけで候補が変わる。
俺の場合も、探すのが難しかったわけじゃない。動くまでに3年かかっただけだ。
まとめ
「年間休日105日はやめとけ」への俺の答えは、こうなる。
日数だけ見て決めるな。ただし、俺は辞めた。
- 求人票の105日は正しかった。全社共通で、俺の稼働日カレンダーもそうなっていた
- 同じ105日でも職種で中身が違う。倉庫とドライバーはシフト、事務と総合職は月〜土
- 正体は土曜だった。105日は週休2日の計算で土曜も入っているが、一部はカレンダー上の出社日。残りも実際は出社が決まっていた
- 休むには自分から言い出し、上司の都合を確認する。休みが「もらうもの」になる
- 長期休みは有休で作る。3年で最長4日
- 連勤は最長6日。日曜は必ず休みだった。休めなかったわけじゃない
それでもしんどかったのは、1日の休みが回復で消えるからだ。
125日になって、1日寝てももう1日残るようになった。「明日も会社だから寝よう」がなくなった。それだけで違う。
もし今から入る会社を選べるなら、日数の前にこれを聞いてほしい。
その休みは、自分で決められますか。
物流業界そのものをどう思っているかは物流業界はやめとけ?「負け組」なのかに書いた。